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青年アーサー (sideアーサー
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「ぁ、アーサー、さま……」
小さな声に振り向くと、柱の影からユーリがこちらの様子を伺っていた。
小動物か。
「…どうした、決まったか。」
「、はい…」
ユーリはアーサーの顔を上目遣いに伺いながら、小走りでアーサーの元に来る。
「………こ……これ…が…かわいいって…言ってました……!」
「……ジャスミン……か。…なるほど…お前にピッタリだな。」
そう言ってジャスミンの種が入った袋を受け取り顎を撫でてやると、今にもごろごろと喉を鳴らしそうな顔で手にすり寄ってきた。
……中々に従順だ。
可愛い。
「…………他には…?」
「…だいじょうぶです……えへへ……」
「…そうか。おい、支払いを頼む。」
アーサーは素早く支払いを済ませ店を出て馬車に乗り込む。
馬車の中でユーリに種を持たせてやると興味津々といった様子でずっとそれを眺めていた。
「……ありがとうございます……だいじに…します………」
そう言ってユーリは宝物のようにそれを細い腕の中に抱きしめる。
アーサーと目が合うと、ふにゃあと顔を緩ませた。
「……アーサーさま大好き。」
不意打ちの衝撃にがくんと体が揺れる。
「っ………」
おい。
急にそんな顔をするな。
私をどうする気だ。
今の言葉は何だ。
むやみやたらとそんなことを言うもんじゃない。
ぐるぐると思考が回って結局出た言葉は
「……そうか。」
だった。
ユーリはにこりと笑い再び種に目を落とす。
また言えなかった。
言いたいことはそんなことじゃないのに。
馬車が城に着く。
ユーリは先に馬車から降りるとメイドの後について門の中に入っていった。
アーサーも馬車から降り、軽く弾みながら歩くユーリを見つめる。
「私も好きだぞ、お前が。」
遠くなる背中に小さくそう呟く。
こんな、誰も聞いていないところでしか言えないなんて。
いい歳して照れて好きな奴とうまく話せないだなんて、とは思うが、どうもユーリの前だとうまくいかないのだ。
らしくもない感情に悩む自分に少し笑うと、ユーリたちの後を追って歩き出した。
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