アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
良い夢を2
-
「ユーリ…ユーリ、まだ寝るな。」
「…ん…………」
アーサーはうとうとするユーリをベッドに横たわらせ、ぺちぺちと頬を叩いた。
「…お前に新しい服を買ってきたのだ。明日もお前に構ってやれるかわからない…だからここで渡しておきたい。」
「………ふく……?」
「ほら、これを見ろ、お前のために買ってきた。」
アーサーはそう言って綺麗な包装の中から先ほど購入した服をユーリに見せた。
ユーリはのそのそと起き上がり、そのキラキラの布に目を瞬かせる。
「、…え、でも、おれ…おようふくはもう3つも着させてもらってます…十分です……」
「1つはあのボロボロの布で、残りはメイドのお下がりだろう?エイダの服などは何百着だってあるぞ。」
「………なんびゃく…?」
(あぁ…数は教えていなかったな……)
キョトンとするユーリに、また教えなければならないことが増えたことに僅かな喜びを覚えつつ、アーサーは淡々と答えた。
「指では到底数えられないほどの数だ。」
「…!すごい…!」
目を輝かせるユーリにそんな良いことではない、とアーサーは小さくため息を吐く。
「ほとんど1回しか着ないという貴族のお嬢様お決まりのパターンだ……ほら、いいから着てみろ。」
アーサーはユーリの服のボタンを外してやると、買ったばかりのその服を着せる。
「………あ…おれ……」
「……………………………」
「や、やっぱり変です…おれなんかがこんな…きれいな……」
「……………………………」
「……アーサーさま………?」
「…かっ………か、……か……」
「え?…アーサーさま、あの、」
(可愛い…!)
アーサーの思っていた通り、そのドレスはユーリの可愛らしさを何倍にも引き立たせている。
アーサーは口元を押さえながらそれに見入っていた。
「………ま……まぁまぁ……だな……」
相変わらず、気持ちに反して口から出る言葉は素っ気ないものだったが。
「………ぁ……ありがとう…ございます……」
が、ユーリはかぁっと湯気が出そうなくらい赤くなり徐々に俯いていった。
「………ぁの……ご、ごめんなさい………」
「なに?」
しかし、予想もしていなかった言葉が飛び出し、アーサーは思わず聞き返してしまう。
「…ぁっ……えっと………」
ユーリは一瞬ビクリと体を強張らせたが、アーサーの表情が怒りのものではなく困惑のものだと悟ると、か細い声を絞り出すように話し始めた。
「……ぁ……お、おれ…は…なにもしてない…のに………ぁ、アーサーさま、のとくべつなひ…なのに………」
「………………………」
あぁ、なんだ、そんなことか、と言うのが遅れる。
ユーリの瞳から耐えきれなくなったものが溢れ出した。
「おれっ……アーサーさまに、なに、もっ…わたせなくてっ……ひっ…ぅ…うぅ……」
「……ユーリ………」
そんなこと、当たり前だ。
ユーリは何も持ち物がないのだから。
唯一の自分の持ち物であり、かつ、1番大事にしているものをくれたのだ。
アーサーはただただユーリを抱き締めた。
ユーリの見返りを求めない無償の気持ちに、自分も同じものを返したかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
110 / 207