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戻れない
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「…は…?」
「アーサーさま…!おれ…っ…行かないと…ルジンが…死んじゃうっ…!」
ユーリは急に瞳から大粒の涙を流し、アーサーに訴えた。
「………おい…泣くな……服が汚れる。」
「…!!ご、ごめんなさい!!!アーサーさまのお洋服……」
ユーリははっと青ざめると、自分の袖で涙を乱暴に拭いながらアーサーに謝った。
「………あぁ…」
アーサーは明後日の方向を見ながら応えた。
アーサーは本当はそんなことを言いたかったのではない。
けれど、どう言ったらいいのかわからなかったがためにあんな言い方になってしまったのだ。
ユーリをチラッと見やると、怯えたように手を震わせながらいまだ目元を拭っている。
(…違う…そんな顔をさせたいんじゃない…)
「…おい…。」
「は、はい!」
ユーリはバッと顔をあげ、濡れた顔でアーサーを見つめた。
「……ルジン…と言ったな……そいつは誰だ?」
「…ぁ……ルジン……ですか…?」
ユーリは少し思案し、顔をあげた。
「…ルジンは……」
ユーリは優しく微笑みながら言った。
「…俺のだいじなひと……」
…その瞳にアーサーは映っていない。
見せたことのないその顔を、自分の知らない奴を思ってしたと思うと、アーサーは何故だか少しイライラした。
「…………お前は戻れない……戻すつもりはない。」
「………え……」
ユーリが目を見開き、歪んだ顔でこちらを向く。
(…私には…そのような顔しか…見せないくせに…)
アーサーはそれきり黙り込んでしまい、ユーリが再び声をかけることは無かった。
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