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葛藤と嘘
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(逃げた?)
(あんなに可愛がっていたのに?)
(何が不満だったのだ?)
食事をしながら止まってしまったアーサーに、エイダは立ち上がって慰めるように肩に手を置いた。
「…アーサー…聞いたわよ、あの奴隷、逃げたらしいって…」
ピク、とアーサーの肩が揺れる。
「………違う…、きっと…何かの間違いだ…ユーリが…逃げ出すはずがない…酷い仕打ちをしてしまったときもあったが……あんなに笑顔を見せてくれたではないか…」
「…あら…?そうかしら…全て演技だったんじゃないの…?きっとアーサーを騙して…逃げる機会を窺っていたのよ…」
言い聞かせるように、耳に口を寄せて。
優しく、嘘を吹き込む。
「奴隷よ…所詮は、奴隷。下賤で、汚くて、平気で嘘をつくの。」
「……………でも…ユーリは違った……」
「…どうかしら…どうしてそこまで信じられるの?たかが奴隷を。貴方が一番蔑んでいたのは奴隷だったんじゃなかったかしら?」
「………………………」
「今まで蔑んでいた人間に突然優しくされて…本当に懐いていたのかしら…?憎んでいたんじゃない…?”急に手のひら返して”…って…!」
「…!!」
アーサーはハッとした顔でエイダを見上げた。
しかし、エイダは突然口調を変えてアーサーの頭を腕の中に抱き寄せる。
「…アーサーは悪くないわ…悪いのは全部あの奴隷…貴方は十分可愛がった…私にはわかるわ…あの奴隷にはそれがわからなかったのよ……」
「………………………」
「…………もし、戻ってくるようなことがあれば………」
「……………………………………」
アーサーは答えなかった。
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