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ところが次の日、部屋にアリアは来なかった。
代わりに、今ユーリの部屋には見たことのない黒髪の、少し気の強そうなメイドがいる。
ユーリのことをジッと見つめてはいるが、ただ好奇心だけを目に浮ばせていた。
「…あんたが…ユーリ…?」
突然話しかけられて、ユーリはビクリと肩を揺らす。
「…、…」
昨日に比べれば大分マシだが、ユーリは自分の喉を指して水がほしいことを伝えた。
メイドはすぐに水を汲んでユーリに飲ませると、もう一度同じ質問をしてくる。
「で、あんたはユーリなの?」
「…はい……」
少し枯れてはいるが、声は出た。
ユーリは目を合わせられず、メイドの揺れる黒髪を見つめる。
「へぇ…私、ケイよ。最近入ったからあんたのこと、知らなかったけど…話にはよく聞いているわ。」
「………………………」
・・・
「なんでも、アーサー様のお気に入りだったとか?でも逃げ出したからこんなところにいるんでしょう?あんたって相当馬鹿なのね。」
「………に、逃げてません…」
「言い訳しないでいいわよ。別に、アーサー様に告げ口したりしないし…ま、どうせ奴隷なんて碌な扱い受けてなかったんでしょう?仕方ないわ。」
「……………………………」
(…違うのに………)
「…ま、とりあえず朝ごはん食べなさいな。あんたの世話係は今日から私。長くなると思うけど…ま、よろしくね。」
ケイは他のメイドや使用人たちに比べて少し口調が荒いものの、ユーリに対しては好意的だった。
新しく入ったからだろうか、ユーリのことをあまり知らないのが幸いだ。
「…ほら、早く着替えなさい。」
「…、…はい……」
ユーリは寝巻きから前と同じメイド服に変えられ、もうすっかり履き慣れたスカートにほっとした。
「今日からあんたの行動は大きく制限されるから、覚悟しといて。まず、あんたが面会を許されるのはアーサー様か私だけ。あと部屋には逐一鍵がかけられるから。」
「…え……」
「あ、窓から飛び降りようなんて馬鹿なこと考えないでね、アーサー様はあんたに死なれても困るらしいのよ。」
「……お、お花…は……」
「花……?あぁ、外の………まぁ、無理でしょうね。」
「………………」
大好きな花かんむりが作れなくなる。
絶句した。
ユーリは本当に、この部屋でしか生きることを許されないのだ。
「…………、……」
「雇い主様の命令だから、同情はしても私が動くことは出来ないわ、良いわね。じゃ、朝ご飯食べて頂戴。」
「………はい…」
ユーリはなんとなく胸に穴が空いたような気持ちになって、空返事をした。
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