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花冠
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明るい。明るい。
小さな音と匂い。
「これが[外]だ。」
一面の緑と晴れ渡る青だけの世界。
見たこともないその景色に、ユーリは目を見張った。
「……きれい……」
「花があるからそこまで行ったら降ろそう。」
(?…『はな』って何…?)
アーサーはユーリを抱きかかえたまましばらく芝生の上を歩いた。
「………ぅわぁ……」
思わず身を乗り出す。
あれが『花』……?
赤、青、黄色、緑、…あれは何色だろう?
とにかくたくさんの色が散らばっていた。
「あ、アーサーさま…、」
降ろしてとばかりに急いてしまう。
「…わかったから暴れるな。」
アーサーがユーリをゆっくりと降ろすと、地に足がついた途端、ユーリは走り出した。
芝生にペタンと座り込み、花に顔がつくぐらい見つめる。
「………」
(きれい……)
見たこともないそれに、ユーリは興味心身とばかりにつついたり中を覗いてみたりする。
「綺麗だろう?」
いつの間にかアーサーが横に立っていた。
途端、ユーリは手を引っ込める。
「ご、ごめんなさい…」
「別に触ろうが摘もうが構わない。」
アーサーはユーリの隣に座り込んだ。
「この花はお前にやろう。私には花畑など似合わないからな。」
「…え?」
「好きにしていい。全部お前の物だ。」
一間空いて、ユーリが言葉の意味を理解した。
「ほ、ほんと!?です、か!!」
「ああ………何度も言わせるな。」
ユーリの顔がみるみる笑顔になっていく。
「あ、ありがとうございます…!!
ありがとうございます……!!!」
ユーリはアーサーに礼を言うと、早速1つ花を摘んで誇らしげにアーサーに渡した。
「…これが1番綺麗です!」
「……ああ。」
アーサーはユーリから貰った花をしばらく見つめる。
「あと数本くれないか。」
「…えへへ……どうぞ……」
ユーリは自分の所有物ができたことが嬉しくて仕方がなかった。
なんせ地下では自由も権利も無かったのだから。
初めての「自分の物」がこんな綺麗な物だなんて、嬉しすぎる。
「…?」
急に頭に何かを載せられた。
手に取ってみると、花で編まれた綺麗な輪。
「…花冠だ。昔母に教わったのをまだ覚えていたんでな…。」
「……かわいい……」
ユーリはキラキラとした眼差しでアーサーを見上げた。
「…作り方を…教えてやろう。」
「!!」
それから数時間、ユーリはアーサーから花冠の作り方を教わった。
最初こそ歪だったものの、何度も作るうちに満足のいくものがいくつか出来上がっていった。
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