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クレヨン (sideアーサー
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書斎に入ってすぐ。
先ほどのメイドがノックをして入ってきた。
「アーサー様、こちらでよろしかったでしょうか。」
メイドの手にはアーサーの頼んだカラフルな箱と数枚の紙。
クレヨンだ。
「ああ。中身は?」
「アドルフ様があまりお使いになりませんでしたので…」
メイドが箱を開ければ、中には新品同様のクレヨンが並んでいた。
あのバカにも少しは感謝だな…
アドルフというのは、アーサーの従弟にあたるユーリと同じ歳の14歳の少年である。
しかしユーリとは何もかもが違い、わがままで傲慢、落ち着きのない子供だ。
アーサーは正直言ってアドルフが嫌いで、家に来たときは本当に二度と来て欲しくないと思った。
アーサーがアドルフに強請られて買ったクレヨンはほとんど使わないどころか、あろうことにアーサーの城に置いていった。
もったいないので捨てずにとって置いたが、まさかこんなところで役に立つとは。
ユーリは興味心身に、少し離れたところからクレヨンを不思議そうに見つめている。
こいつならきちんと使ってくれそうだ。
アーサーはメイドをさげ、クレヨンを持ったままユーリに近づいた。
ユーリのクリクリとした可愛らしい目はクレヨンを捉えたままだ。
「…これをやろう。私の従弟が置いていった物だ。
もう日の目を見ないと思っていたが……お前が使うのなら報われるだろう。」
アーサーはクレヨンの箱を開け、中身をユーリに見せた。
「…………わぁ……」
ユーリの瞳がキラキラしたものに変わる。
…アドルフは買ってもらったのが当然のように手から奪い取っていったが。
「…きれい……」
「……これはこうやって使う物だ。私が仕事をしている間はこれで暇つぶしをするといい。」
そう言ってアーサーは紙を一枚机に置くと、適当なクレヨンで丸を描いた。
「!!!!」
ユーリが身を乗り出す。
アーサーの顔と描かれる線を交互に、さぞ驚いたように見る。
「すごい…!です!」
「…………………ああ…。」
クレヨン1つでこの有り様。
アドルフと同じ歳だというのに、この差は何だ。
「受け取れ。」
「…ぇ…いっ…いいんですか……?」
「むしろ受け取ってもらわないと困る。使わないのなら邪魔なだけだからな。」
アーサーはユーリの手にクレヨンをのせた。
ユーリはアーサーの顔を少し伺った後
「…………ぁ…ありがとうございます…」
と、ふにゃりと笑顔になった。
「……………………。」
クソッ……何故こいつが従弟じゃないんだ…
地下なんかで働かせていたのを悔やむ他ない。
本当は、もっとユーリを甘やかしたくて仕方がないのだ。
「じゃあ、そっちで好きなものを描いていろ。私の仕事が終わったら夕食にする。」
「はい…!」
ユーリはクレヨンを大事そうに抱え、アーサーとは別の机に座り紙を広げる。
仕事をしながらユーリを盗み見る。
楽しそうにクレヨンを選んでいるユーリに、アーサーは少し満足そうに微笑んだ。
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