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激情と恐怖
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やっと仕事が終わり、横にいるユーリを見やる。
「…ユーリ、夕食に…」
「…………………………」
……寝てる。
どうりで静かだと思った。
クレヨンを握り締めたまますやすやと幸せそうに。
…普段もずっとこういう顔をしていればいいものを……まだ私と話すときは固い。
心を開くのはいつだ。
いつになればいつも私にその顔をしてくれる?
アーサーは少し眉間にしわをよせ、ユーリを抱え上げた。
「……?」
はらりと、ユーリの手元から何かが落ちた。
ユーリの描いた絵だ。
拾い上げ、その絵を見る。
あまり上手ではないが何を描いているのかはわかった。
アーサーの城の庭だ。
芝生、花畑、ユーリらしき人物と……
「………………………」
黒髪の少年。
アーサーではない。
アーサーは金髪だ。
……誰だこいつは……
絵の中のユーリは黒髪の少年に笑顔で花束を渡している。
誰だ…?
誰だ誰だ誰だ…
知らない内に紙を持つ手に力が入った。
「……ん…」
そのとき、ユーリの目が薄っすらと開いた。
アーサーは丁度いいとばかりにユーリを床に降ろし、紙を見せる。
「…こいつは……誰だ…?」
ユーリは目を擦り、しばらく紙を見つめた後
「ルジンです…!」
と花のように笑って言った。
途端、アーサーの中にフツフツと怒りが込み上げてくる。
何だその顔は
何だその声は
何でそんなに嬉しそうに言う
「っ!!!……何故だ……!!!」
『パチンッ!!!!』
アーサーの掌がユーリの頬を弾いた。
ユーリはそのままよろけて尻餅をつく。
「………………ぁ……」
ユーリは頬を押さえ、アーサーを見上げた。
怯えたような目には水が溜まっている。
「あ…」
………違う…
叩きたかったわけじゃない…
違う……
「ユー…」
急いで起こそうと、手を伸ばす。
が、ユーリは両手を床につき頭を床に擦り付けた。
「……た、たたかないで…下さい…!嫌………痛いのは……嫌……です…ごめんなさい……!ごめ…なさ……!」
ユーリは必死に頭を床に擦り付け続けた。
ユーリには何故自分が叩かれたのかはわからなかった。
でもきっと自分が悪いのだ。
アーサーの気に触れるようなことをした。
殺される。
ユーリの頭が一瞬にして恐怖に染まっていった。
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