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おもちゃ
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広い風呂は2人入ってもまだ余裕がある。
しかしそれが原因で、2人の間には微妙な隙間が空いていた。
ユーリは何をするでもなくぼんやりと揺れるお湯を見つめ、ときどき自分の腕で波を作ったりしている。
ふと、アーサーは気づく。
おもちゃだ。
ユーリにはおもちゃがない。
そういえば、部屋で遊ぶものも先ほどやったクレヨンだけだ。
アーサーはバシャバシャと水音をたてながら湯船を出た。
ユーリがビクッとアーサーを見上げたが、「ちょっと待ってろ」と言うと、頷きまた水面に目を落とした。
「あ、アーサー様!?」
急に予告もなしに浴場から出て来たアーサーに、着替えを用意していたメイドが声を上げた。
「も、申し訳ございません!ただいま出ます…!」
「待て。」
メイドは視線を外しそそくさと部屋を出ようとしたがアーサーの声に呼び止められる。
「は、はい。いかがいたしましたか?」
「アドルフが使っていた玩具を全て出しておけ。
風呂で使えるものは全てもってこい。」
「は、はぁ…かしこまりました。」
「頼む。」
今ほど従弟がいて良かったと思ったことはない。
アドルフが飽き性なのも良かった。
ほとんどの玩具は手をつけられずにしまってあるはずだ。
(…ユーリは…喜ぶだろうか。)
メイドが戻ってくるのが待ち遠しかった。
「ユーリ。」
「は、はい。」
バッと水面から目を離し、アーサーを見る。
何を言われるのか不安だ、と顔に書いてある。
「これをやろう。」
アーサーが取り出したのはゴムなどで出来たカラフルなおもちゃ。
アヒル、さかな、ヨット……
ほかにも細かいおもちゃがたくさん。
「あ…!」
ユーリは湯船から身を乗り出し目を輝かせた。
みたこともない可愛い綺麗な物に、興味津々といった目をしている。
アーサーは嬉しかった。
ユーリが喜んでいる。
手に乗り切らないほどのおもちゃをユーリの周りに浮かべ、アーサーも湯船に浸かる。
ユーリはプカプカと浮かぶおもちゃを不思議そうにキョロキョロと見つめていた。
「……好きにしていいぞ。お前にやる。」
「…!!」
ユーリはおもちゃとアーサーを交互に見ると
「あ、ありがとうございます…。」
と笑った。
多少ぎこちないが、アーサーにはそれで十分だった。
(やはり笑っている方がいい…。)
頭を撫でようとしたが、怯えられそうだったのでユーリの好きな顎を撫でた。
案の定、ふにゃふにゃとした顔をし目を閉じて気持ち良さそうな顔をする。
「ふ……ほら、のぼせる前にたくさん遊んでおけ。」
「はい…!」
お風呂用のおもちゃで楽しそうに遊ぶユーリを見て、アーサーはもっとたくさんおもちゃを買ってやろうと決意した。
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