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地獄
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「ね、どうしてピャフピャフしか言わないの?」
『ピャフッ』
「…うーん…」
ユーリは間抜け面を正座した膝に乗せ、じっくりと観察した。
「…えへへ……俺の…あひる…」
黄色くて丸みを帯びたゴムはユーリには宝物にしか見えない。
唯一気兼ねなく話せる友達。
ユーリはアヒルが相手だとやたらと口数が多かった。
「俺『お花畑』っていうの貰ったんだ。それではなかんむりっていうの作って……そうだ、あひるちゃんにも今度作ってあげる…!」
最近あった1番嬉しかったこと、美味しかった物、アーサーのことなど、ユーリはアヒルに自慢をしてはにこにこと笑った。
ユーリの時間はあっという間に過ぎていく。
その頃、アーサーは玄関に立っていた。
もちろん、アドルフ(と言うよりその母親)を待っているのだ。
「!」
ギギギ…と扉が嫌な音をたてながらゆっくりと開いた。
「あら、アーサー!」
「アーサー兄ちゃん!」
ドタドタと子供が入ってくる。
そしてアーサーに勢い良く抱きついた。
飛びついた子供に内心眉を顰めながらも顔を上げる。
「……お元気でしたか、マダム・リュシー。」
「…ええ。…で、今日から2日その子を預かってもらいたいのだけど。」
「はい、わかっています。」
「ありがとうアーサー…私とても急いでいて…もう行かなくてはいけないわ。」
「え!?母さんもう行っちゃうの?」
「母さん、ではなくてお母様とお呼びなさい……時間がないのよ…ごめんなさいね、アドルフ。
じゃあアーサー、頼んだわ。」
「……………はい。」
マダム・リュシーはアドルフを届けると、さっさと出て行ってしまった。
今日から2日間、アーサーにとって地獄の日が続く。
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