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片目
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「…応急処置はしましたが……この目は放っておけば失明しますな…」
「!…では手術を……」
「…この街にはこの子の目を治せるような技術を持った医者はおりませぬ…2つ隣の街に行けば高度な医療技術が施せますが…今この子を連れていっても体力が持たず途中で……それにもしたどり着いたとしても手術の負担で死んでしまう可能性が高い…」
医者はユーリの身体中に残る生傷を見つめ、ため息を吐く。
ケイはどんどんと暗闇に落ちていくような感覚を胸に覚えていた。
「それに彼は奴隷のようですし…手術には莫大な費用がかかりますからな…ここの主人が出してくれるとは…」
「……この子の目は……」
「……もう、見えないでしょうな…」
ずし、と体が重くなる。
(ユーリが…失明…)
「……………………………」
「今はまだ視力があるはずですが…1ヶ月…いや、3週間ほどで完全に見えなくなるでしょうな…」
「…そう……ですか……ありがとうございます…」
それきり黙ったケイを見ながら、医者はおもむろに立ち上がって広げていた道具を片付けた。
「…どんな事情があるかわかりませんが今はこのまま安静に…この子供は相当な体力を消耗しております故…」
そう言って一礼してから、帽子を被って部屋を出て行く。
「……失明……?」
ケイは医者を玄関まで送ることを忘れ、その場に立ち尽くしていた。
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