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されど
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「アーサー様…ユーリは手術をしないと……このままでは左目が失明してしまいます…」
「………失明……」
鸚鵡返しのような返事をしただけで黙ってしまったアーサーに、ケイはどうすればいいのかわからなくなる。
「…ユーリに手術を…してくださいますよね…」
伺うように問いかける声は震えた。
アーサーはどこか別のところを見ているように虚ろな目で口を開く。
「……………”たかが”奴隷の目が片方見えなくなっただけで私が困ると思うか…?」
「……………」
アーサーの冷たい物言いに、ケイは何も返せなかった。
そう言われてしまえばケイはどうすることもできない。
「アーサー様………」
「…1人にしてくれ、ケイ…今は考える時間がほしい……」
「…………、………」
そこでアーサーが失意の底にいることに気がついた。
『たかが奴隷』などと酷い言葉を出し、自分に言い聞かせようとしているのだ。
ユーリは自分を裏切った裏切り者だと、そう思えば思うほど、心を痛めている。
どれだけユーリを信頼していたかということだ。
「…ケイ、早く外に出て……」
「…私…アリアさんと話をしました…」
「…………」
懐かしくも思える名前に、アーサーは少し顔を上げた。
「ユーリがそんなことをするはずないと、心からアーサー様を慕っていたと、そう聞きました。」
「…、…それは…」
「アーサー様を騙していたと…私もそう思っていました…でも、そのあと、ユーリにアーサー様のことが好きかと…聞いたんです…そしたら…」
「……………………」
「……そしたら、急に明るい顔になって…声が優しくなって…私が見たこともないような笑顔で『アーサー様のことが大好きです』と……」
「……、…」
「本当にユーリは裏切り者なのでしょうか…?私には真実がわかりません…何か…何か見落としていませんか…?本当にユーリが裏切ったとお思いですか…?」
ケイはいつの間にか泣き出していた。
真実はわからない。
2人を知らないから、結論づけもできない。
でもここ数日ユーリと過ごした自分には、『ユーリは逃亡などしていない』と確信が持てる。
なのに、証拠がない。
証拠だけがない。
「…ユーリの目の手術を…お願いします…お願いしますアーサー様……」
泣き崩れたケイの背後で、ゆっくりと扉が開いた。
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