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痣 (sideアーサー
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「………クソ………………」
ユーリを風呂に入れて良かった。
ユーリの体の異変に気づかずに過ごすところだった。
大丈夫です、と笑うユーリはこんな時だけ我慢しているのが見え見えだ。
さっきはわぁわぁ泣いていたくせに。
何が大丈夫だ。
ユーリの体はところどころ痣だらけだった。
まだ赤色が混ざっていて紫のところもある。
痛々しい。
「…ユーリ……本当にすまない……私が留守にしたばかりに………」
「そんな……今は痛くないです…だ、大丈夫ですから本当に……」
「………『今は』、だろう?」
「…………ぁ…いえ………あの………」
ユーリは吃る。
別に困らせたい訳ではないが……
「ほんとに…大丈夫、です…」
そう言って浮かべた苦笑いが更にアーサーの胸を締め付ける。
我慢するな。
痛いんだろう?
さっきみたいに泣いて……私に縋ればいいじゃないか。
アーサーは、気づいている。
今までどんな状況でもユーリが自分から触れてきたり抱きついてきたりしたことは一度も無かった。
主人と奴隷という身分の壁がある。
奴隷のユーリからしたら高い壁だろう。
ユーリは自らそれを越えたりはしない。
アーサーが越えて来たときだけ、少し手を伸ばし微笑むのだ。
ユーリにも自分から壁を越えて来て欲しいのに。
私がいかなければ触れられない…触れてこない。
「………………そうか……………痛かったら………言うんだぞ…。」
「はい」
自分で洗う、と言うユーリの手からスポンジを奪い取り隅々まで(健全な意味で)優しく洗う。
ユーリは痣が痛むのか時々眉を寄せたりしていたが、声を上げることはなかった。
洗った後に浴槽に浸からせると、何もすることがないのかユーリは水を揺らして遊んでいた。
いつも一緒にいるアヒルは今ごろアリアの手の中だ。
「…………………………」
「…………………………」
アヒルがいないとこんなにも話をしないものか。
…何か話題を………
「……ユーリ、昼食の後にしたいことはあるか。」
「………いえ……ありません……」
「…外に出てみるか?…今日は…天気が良かったぞ。」
「…………大丈夫です……ごめんなさい……」
何故謝る………
「…………………………………」
「…………………………………」
また沈黙だ…
何か他に………
何かユーリが興味の持ちそうなもの……
「………じゃあ昼食の後は……私の部屋で少し休んでアップルパイでも食べるか。ダージリンティーとの組み合わせが良くてな…たまにはいいだろう。」
「……あっ…ぷるぱい……?」
興味が湧いたのか、ユーリは少し顔を上げた。
「りんごをパイに詰めて焼くものだが………知らないか。」
「……りんご………」
「あぁ。とても美味しくて綺麗な果物だ。……食べるだろう?」
「……ぁ……えと………」
「…言いたいことははっきり言え。」
アーサーの言葉にユーリは一瞬ビクッとしたが、頭を撫でてやると少し頬を染めた。
「………た、たべ、たい…です…」
「……そうか。では後で焼かせよう。」
アーサーの言葉に、ユーリは少し嬉しそうな顔をして水を見つめていた。
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