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初 (sideアーサー
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「ユーリ、しばらくここで待っていろ。私は少し……やることがある。」
もちろんアドルフのことだ。
あれは何とかしないとまずいだろう。
「あ………」
食後、アーサーの部屋に戻りユーリにぬいぐるみを手渡すとアーサーはさっさと出て行こうとする。
しかしユーリはアーサーに駆け寄り控えめに指に触れてきた。
「っ………な、なんだ、」
「……っぁ………ご、ごめんなさい……」
無意識だったのか、ハッとして離れようとするユーリの手を咄嗟に掴んだ。
初めてユーリから触れてきた。
離すわけにはいかない。
「なんだ……言ってみろ……。」
「…………ぁ、……の……」
「…ん…?」
「……………な、なんでもないです…ごめんなさい………」
「…………ユーリ………」
アーサーがため息を吐きながらしゃがむと、びくりと肩が揺れる。
「ご、めんなさい、ほんとに…なんでもないんです…ごめんなさい…」
泣きそうな声で掴まれた手を離そうとしているのかクイクイと腕を引く。
しかしアーサーは離さずもう一方の手も握った。
「………怒ったりしない。言ってみろ。」
「…………ぅ…………うぅ〜………」
遂にユーリが泣き出してしまった。
しまった…
「どうした…?手を掴まれるの…嫌か…」
「ち、がいます……」
ブンブンと頭を横に振って否定をする。
じゃあなんだ…?
「…ぅ……グスッ……」
「ユーリ……ほら………」
親指で涙を拭いさすってやるとグスグスと鼻を啜り頷いた。
しばらく小さな嗚咽を漏らしながら肩を揺らしていたユーリは途切れ途切れに話し出した。
「……おれ、こわ、くて……」
「……………何が…?」
ユーリの手に力が篭った。
「………………おいてかないで……」
「っ………」
「こわい……っ…こわいです……ぅ…1人……やだぁ……っ…」
トラウマ、とかいうやつだろうか。
ユーリには申し訳ない限りだが、縋ってくる姿は可愛らしいというか…庇護欲に駆られて仕方がない。
「……一緒に行くか?……アドルフがいるが………」
「……………ん…いきます…いきます……だいじょうぶ…です……」
ユーリはアーサーの袖を掴みこくこくと頷いた。
可愛い。
もうそれしかでない。
勉学には励んできたつもりだ。
言葉の数には自信があったが……何故可愛いしか出ないのか……
不思議だ。
「………偉いな。苦手なものに立ち向かえるのはいいことだ。」
くしゃりと頭を撫でるとユーリがふわりと笑った。
「………ありがとうございます……へへ……」
可愛い。
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