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Episode38
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「にーたんっ、あーしょーぼっ!」
弟の声がする。
何故?俺は今、弟と住んでいないのに。
…あぁそうか。
これはまだ、俺が産まれて2年程経った頃の事だ。
まだ言葉が覚束無い弟の湊と、よく遊んでいた…。
*
「…侑、私達は出かけてきますからね。」
母親の冷ややかな声。
決して怒鳴られたりしていないのに、この声を聞くといつも身体が強張っていた。隣にくっついている湊の身体も、勿論固く強張っている。
「…にーたん…」
*
「しー…ユウ君、大事な弟君に手出しされたくなかったら、大人しくおいで。」
これは、俺が親に「遊んできて」と外に出されていた時。生憎行った公園には誰もいなくて、一人虚しく砂場を掘っていた。
いきなり後ろから口を押さえられた時にはもう、子供ながらに理解していた。
言葉など分かっていなかったけど、何となく分かっていた。「きっと、家には帰れない」と。
それを悟った時に真っ先に浮かんだのは、湊の事だった。
湊は、どうやって暮らして行くのだろう?
ちゃんと生きて行けるだろうか?
ただ、湊の笑顔を浮かべながら、無事に健康に生きて欲しいと願うだけだった。
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