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Episode44
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ぼんやりと考えていた俺は、自殺しにきた事をやっと思い出した。
きっと、担当医が探しているであろう事も。
早く、死なないと。
震える手で、再び手首に当てる。
心臓の音が警報代わりに大きく鳴り響く。
暑くもないのに汗が噴き出して、呼吸も荒くなる。
早く、早く。
フェンスを引け。
引けっ!!
心中の叫びと共に、力強くフェンスを引いた。
鮮血が、そこらじゅうに飛び散った。
痛い。
ふらふらして、立っていられない。
…血って、綺麗な赤じゃないんだな。
そう考えている間にも、どんどん血は流れていく。
患者服を赤く染め上げていく。
「…は、はは…」
いつもより更にボヤけた視界で、流れていく血を見た。
…なんで、涙が出てるんだろ?
悲しい事なんて、ない筈なのに。
もしかしたら、死ぬ人って皆感傷に浸るのかもしれない。
死ぬ時には走馬灯が走るとか言うけど、そんなものは見えない。
そもそも、見える程の思い出がないのかもしれない。
なら、少し残念だな。
…あ…眠たい…。
『…侑君っ!』
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