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Episode49 side時雨
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「…なんで、起きねぇんだよ…」
涙を染ませた声は、虚しく消えた。
その声は、僕のものではない。
両親が出さなかった捜索願を出した、侑君の弟さん。
あの親切な警察官が、彼の番号を調べて連絡したそうだ。
侑君の生存率は五分五分だ。
連絡を受けて慌てて来た弟さんは、顔面蒼白だった。
血の気が失せて青白い侑君を見るなり駆け寄って、今でも名前を呼んでいる。
ピッ、ピッ、ピッ。
機械的に鳴るその装置が、今は恨めしく思えた。
弟さんを、更に不安に陥れる気がしたから。
「起きろよ、兄さん…」
「にいさんっ!起きろよ!!」
ぽたり、ぽたりとシーツに次々と染みを作っていく。
同時に、何故だか流れた侑君の涙と合わさる。
言葉がなくなった。
ただ只管に、彼は無言で訴えかけている様だった。
「…み、なと…?」
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