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Episode52
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お前は、どれだけ成長したんだよ…?
公園で転んで、膝から血が出て泣いた湊。
上手く気持ちを言えなくて、もどかしさに泣いた湊。
いじめっ子に玩具をぶん取られた悔しさに、泣いていた湊。
泣き虫な湊を、俺が守らないとと意気込んでいた俺。
いつの間に、立場が逆転したんだ?
「兄さん」と優しい声で俺を呼ぶ湊に、安堵したのは事実だ。
お前との空白の十数年。
それを埋める、機会が欲しい。
湊がこの期間の間、何に泣いて、何に笑って、何に怒って、何をしたのか。
教えて、湊。
**
「兄さんごめん、俺、もう帰らなくちゃいけないんだ。」
時計を見ると、面会時間終了の時間になっていた。
大して会話も出来なかったな。
もっと、俺から話しかければ良かった。
湊の事を知れる、良いチャンスだったのに。
そっと離された手。
ずっと感じていた温もりが、冷めていく。
湊が、離れていく……。
「…やだ…みなと…」
行くなよ。
もう会えなくなるのは嫌だ。
行かないで……。
「馬鹿だなぁ、兄さん。」
暖かい声と共に、また手を握られた。
「また明日も来るから。
それに、俺らは兄弟なんだからさ。」
再び離れていく温もり。
でも今度は、寂しさを感じなかった。
「また明日ね、兄さん。」
湊が、確固たる約束をしてくれたからかもしれない。
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