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Episode53
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湊が帰った後は、当然ながら担当医と病室に2人きりになった。
正直、嫌だ。自殺未遂について説教されるのも嫌だし、否定されたり、同情されるのも嫌だ。
大人はみんなそうだ。
自殺でもしようもんなら、「死んだら悲しむ人がいる」だの「生きていれば良い事が必ずある」だの。
所詮、それは綺麗事。
もし悲しむ事があったとしても、それは生涯でたったの一瞬きり。
そいつが寿命を全うする頃には…いや、それより前に忘れる事だ。
「生きていれば良い事がある」に対してもそう。
「良い事がない」から自殺を選んでいると言うのに、
「生きていれば」なんて理想論、馬鹿馬鹿しい。
そんな綺麗事は、俺らの様な人間を侮辱する言葉。
絶望を抱いた人間が、解放されようとして何が悪いのだろうか。絶望を抱かない人間に、それは分からない。
いくら口先で分かった気になろうが、それは理解していないに等しいから。
「分かった気になっていた」人間は、その立場になって漸く理解する。
その時初めて、苦しみを覚える。
その時初めて、「本当の意味での」絶望を理解する。
そして、「分かった気になっていた」事を後悔する。
そいつを知らぬ間に侮辱し傷つけた事を知るんだ。
俺の気持ちなんて、誰にも分からない。
…分かって貰おうとも思わないけど。
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