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Episode54 side時雨
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僕は、侑君にずっと睨まれている。
けれど、その表情の中に多少の恐怖も混じっている。
過敏に、感じ取らなければならない。
「侑君、何か勘違いしていない?」
「……」
「僕は、君を叱るつもりなんて全くないんだよ。
余計な事を言うつもりもない。」
そう。
僕は元々、死ぬ事を否定していない。
勿論肯定もしていないけれど、それは別の話。
そもそも自殺者は苦しいから死んでいるのであって、別に好きで死を選んではいない。
それを止めてしまうのは、却って彼らを苦しめる事に他ならない。
かと言って、僕は自殺を推奨した事はない。
でもそれは病院の中だから。
もし知人や家族等が自殺を選んでしまっても、特に止めるつもりも咎めるつもりもない。
無論、理由が理由なら、だけど。
「侑君は、逃げたい?」
その問いを投げ掛けると、侑君は顔を上げた。
いつも通り僕と目を合わせようとはしない。
いつもと違うのは、目が泳いでいるところ。
問いの答えについて、迷っているのかもしれない。
「僕はね…病院関係者としては「死ぬ事」を辞めさせる。でも病院外でなら、否定はしない。」
死にたいんでしょ?
いや、死にたかった、かな…?
「死にたいのに死ねないって、凄く苦しいね。
もどかしくてさ、でも死が怖くもあるんだよね?」
「どうしようもない気持ちが、あるんじゃない?」
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