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Episode58
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…痛くない。
ボールペンを刺した筈なのに、何も感じない。
それとも、死んだら何も感じなくなるのか?
俺は、閉じていた目を開いた。
すると、ボールペンを持った手を押さえていたのは白くて綺麗な手。
見上げると、そこには馴染みのある顔。
…俺の、担当医。
そいつの表情は、一言で言い表せないものだった。
俺が担当医の顔をちゃんと見た事がなかったからかもしれないけど。
悲哀と、怒りと、憎悪と、後は…?
表情が混ざり過ぎて、分からない。
表情を見ていると、そっとボールペンを取られた。
何故だか、反抗する気が起きなかった。
そっと取られたからかもしれない。
奪い取られていたら、俺はきっと反抗していた。
担当医から目を離せない。
それは、在り来たりの恋心とかじゃない。
何でか分からないけど、いつもの担当医じゃない気がした。
…声を荒らげた事のない奴の顔じゃない気がした。
「…侑君。もう君は、『ご主人様』に縛られちゃいけないんだよ。」
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