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「…で、な。相談するっつっても、ワケアリで…まるごと全部は話せねーんだよ」
とりあえず場所を屋上に変えて、そう切り出した
「おう。別にそのへんは深入りしねーから気にすんな」
木村が軽く笑う
こいつの距離のとりかたはほんと絶妙なんだよなぁ…
ワケアリ。
ワケとはもちろん、女装のことだ。
んなもんさすがに言えねー
「まずさ、そいつと会ったのが俺がバイトしてる店の近くの路地で。すれ違っただけなんだけど一目惚れされて」
「ふんふん」
「ただそんときは訳あって…俺なんだけど俺じゃない状態で」
「…なにそれ?二重人格的な?」
「や、内面は俺なんだけど外見が…その…」
女の姿だったわけだ。
「あー、おけおけ。ふんわり理解した」
ここは話せない、というのをくみとったらしい
コミュニケーション力たけぇなー…
「じゃあそのすれ違った子は、直じゃないそれに一目惚したんだ?」
「そー、そんな感じ」
直じゃないそれ…俺じゃないそれ。
それとはつまり、直井優になるわけだが
智春は俺ではなく、直井優に恋したのだ
「んでその後、偶然そいつとまた会って。んでメルアド交換しちゃって…」
「ダメなの?」
「ダメっつか、正体バレたくねーからそいつとはあんま近づきたくなかったんだよ」
「あー、そゆことね。でもメル友になっちゃったんだ」
「そー。そんでいろいろ話して…そいつすっげーいいやつでさ。俺なんかにはもったいないくらい…って、別にあいつは俺が好きなんじゃないけどさ」
「うん」
「で、この間初めて電話がかかってきて。今度一緒に遊びませんかって」
「わぉ、デート?」
「…そうなのかな?わかんねーけど」
「で、なんて返事したの?」
「………断ろうとは思った。けどあいつが必死なのが伝わって…無理だった」
「オッケーしちゃったんだー」
「そんでデートして…」
「して?」
「…キス……された」
「大胆だね、その子も…。直はその後どーしたの?」
「その……」
「ん?」
「…そのまま帰った…」
「うわぁ…ヘタレ」
「素直に言うなよ!」
「だってそーじゃん!キスされて逃げるとか相手は相当凹むよ!?」
「うっ………」
「で?その後は?」
「すみませんってメール着てて…他にもいろいろ…けどなんて返していいかわかんなくて」
「そのまま放置してるわけ?」
「…」
「うわぁー。で、なに?それが先週の話だよね?」
「うん…」
「ヘタレすぎるっっっっ!!!」
「叫ぶなよバカ!」
「バカはお前だろっ!なんで返してあげねーの」
「…だって…」
「だって、なに?」
「だって!俺正体隠したままなんだぞ!?このまま隠しておくとか無理だし…でもいまバラすのは………怖い…し」
男だ、なんて
言えるわけがない
そんなの軽蔑されるに決まってるし、そうしたら智春は…
俺のそばからいなくなってしまう
そんなの嫌だ…
「…え……直、あのさ。1個確認していい?」
「なに…?」
「お前、その子のこと好きなの?」
「え……」
涙目になっていた顔が、みるみる熱くなる
俺が智春を好き…?
「その子をやんわり断りたいのかなって思ってたけど…お前の言い方だと、正体バラしてそいつに嫌われんのが怖いみたいだし」
「…えと……でも俺は…」
「つーか!そんな顔してるくせに好きじゃねーとか言わせないっつの」
好き…なのか?
俺が…優木直が?
「………好き」
智春に対するこの離れがたさは
そういう感情…だったのか
「要するにお前、自分の気持ちも知らなかったのかよ…」
「だってこんなの…ありえないし」
俺も、智春も、男同士なのに…
「ありえなくねーよ。どんな条件があったって、好きな気持ちにありえないことなんてない」
「なんか木村が言うとキザだな…」
「ほっとけ。…そんで?」
「…え?」
「これからどーすんの?」
「これからって…」
「本気で好きなら早めに正体バラしとけ。今のまま引っ張ってもお互い傷つくだけだぞ」
「でも正体バラしたら…俺もうあいつとは…」
「んなもんどっちにしろバレる。どーせなら早く言っとけ」
「それもそう…なのか?」
「そーだよ。」
「…そーか…」
俺がずっと隠していたのは…ただ先延ばしにしていただけなのかもしれない
どうせバレる…たしかに、そーだよな
隠し通せるわけないんだ
なら今のうちに…
「ちょっと失恋してくる!!」
「おうよー、ファイト」
嫌いになられたっていい
今度は俺を…優木直を見てほしいんだ
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