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1 side:アキラ
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1週間前、彼女ができた。
初めてできた彼女。
それを自慢したくて、隣の家の一つ下の幼馴染、俊(しゅん)の家の扉を叩く。
「よ!」
「……あれ?珍しいね」
土曜だから今まで寝ていたのだろうか…
少し不機嫌そうに俊が出迎える。
「これ、お袋から」
出かける時に渡されたグラタンを俊に手渡す。
これは彼の好物だった。
「ああ……あがってく?」
俊とは中学まで良く一緒に遊んでいたけれど…
俺が高校に入った頃から、自然とお互いの家を行き来することは減った。
仲が悪くなったわけではないけれど、それは自然な流れだった。
そして俊が家から遠い高校に進学してからは、顔を合わせるのも少なくなっていた。
「久々だな、俊の家」
てっきり部屋に案内されるかと思いきや、リビングに通される。
「コーラでいい?」
「うん」
「アキラは、お昼食べたの?」
「ウチで食ってきた」
「そう」
いつ頃だったか、「アキラ」と呼ばれるようになった。
昔は「アキ兄ちゃん」とか、「アキちゃん」だったのに。
―――お袋が作ったグラタンを食べる俊。
久々に見たけど、また一段と男前になっている。
「……何?」
俺の視線に気づいたのか、俊は手を止める。
昔は、女の子みたいに可愛かったのに…
暫く見ない間にイケメンになってるし、背ももう俺より少し高い。
それに俊の高校は地元でも有名な進学校だ。
「俊さ、彼女いるの?」
こいつは幼稚園の頃から既にモテモテだった。
「今はいないよ?なんで?」
今は……ね。
やっぱ、自慢するのはやめておこう。
「……別に。相変わらずモテてるんだろうなって思って」
俊はまたグラタンを食べ始める。
口元についたソースを拭う仕草が、ちょっとセクシーだなぁなんて、思っちゃったりして。
今度俺もカッコよく食べるの意識してみよう。
って、そんなこと考えること自体カッコよくないのか。
「アキラは、彼女できたんだって?」
ボンヤリと俊を見ていたら、思わぬ言葉をかけられた。
「!!」
ぎゃ!こいつ知ってたのか!
「おばさんが言ってた」
くそ、お袋のやつ~!
これじゃぁ自慢しにきたのがバレバレみたいじゃないか。
「ま…ね」
てっきり、面白おかしく話を聞かれるのかと思ったのに、俊は案外素っ気ない。
つまんないの…
肩肘をついて、溜息をつく。
俊にしてみれば、彼女がいることなんて当たり前なのだろう。
「部屋…来る?」
グラタンを食べ終わった俊が聞いてくる。
「あ!行く!行きたい!」
それこそ俊の部屋は久しぶりだった。
思わず2つ返事で答える。
「コーラ飲んでてよ。片付けるから」
そう言ってグラタンの皿を持って台所に行く俊。
何でこんなに嬉しいのかな?と思いつつ、俺は残っていたコーラをいっきに飲んだ。
「なんかゲームある?新作の」
2階の俊の部屋、階段を昇りながら見る俊の背中。
前はよく来ていたのに…今は久々過ぎて変な感じがする。
「いや、最近ゲームやってない」
最後にゲームをしたのって、俺の受験前だったから…
もう3年も俊と遊んでいないのか…
「まぁ…進学校だと宿題とかも多そうだもんな」
俺の学校は宿題が殆ど出ない。
通学時間もかからないし、凄く気が楽だった。
「アキラは学校、楽しい?」
部屋に通されながら、俊の質問に答える。
「まぁね」
俊の部屋の匂いだ。
昔とカーテンやベッドのシーツが変わっていた。
前はもっと子供っぽい柄だったのに…今は黒がベースでちょっとシックになってる。
それだけで、部屋の雰囲気はだいぶ大人っぽくなっていた。
「部屋、いい感じだね」
俺も、今度部屋の模様替えしよ…
「彼女は同じ学校の子?」
昔よく部屋に来てた時の俺の指定席。
ベッドの上に腰掛ける。
「そ。1個下だから、俊と同い年だな」
そう言うと、俊は勉強机の椅子をこちらに向けて座る。
長い足を目の前で組まれて、少し羨ましくなる。
「アキラが告白したの?」
「いや、向こうから。美弥っていうんだ」
俊から視線を外し、1週間前に告白してきた彼女…
子猫みたいにコロコロと表情が変わる美弥を思い出す。
「それでいつ知り合ったの?」
「………いつって…」
「告白されたから、付き合ったんでしょ?」
「う…うん…」
「事前に面識があったわけじゃないんだろ?」
なんか面接みたいな質問攻めだな…
別に美弥とは知り合いでもなんでもなかったけど…確かに告白されたからOKと応えたのだ。
「好きなの?その子のこと」
真っ直ぐな目で見つめられると「そうだ」とも素直に言えない。
美弥のことは、嫌いじゃない…
でも、好きって言われると……正直微妙なのだ。
「アキラは好きでもない子に告白されて、OKしたんだ」
「いや…でも、可愛かったし…」
ハイその通りです。
告白されて、つい付き合いました。
でもそんな言い方しなくてもいいじゃないか…
「彼女が好きなんじゃなくて、彼女が欲しかっただけなんじゃないの?」
「うっ…」
もう、否定できない…
憧れの‘彼女との’学校生活を送ってみたいってのもあったんだけど…
「………」
確かに、よくよく考えてみたら俺って酷いやつかも…
「………」
どうしよう、自慢しに来たはずが、墓穴掘りにきたようなものじゃないか……
「………ブハッ!!」
言葉が返せないでいると、俊は急に笑いだす。
「美弥チャン可愛いんだぁ!アキラって意外に面食いだったんだね?」
昔の、俊の笑顔だった。
「なんだよそれ…」
「ごめんごめん。どうせ自慢しに来たんだろうなぁって思って、意地悪ちゃった」
明るく笑う俊につられて、俺もつい笑顔になる。
そうですよ。うかれて自慢しにきましたよ。すみませんでしたね。
「やめろよもう!年下のくせに生意気だぞ!」
まったく、こいつはいつからこんなに可愛くなくなったのか…
カラカラと笑い続ける俊を見て、今まで疎遠になってた溝が埋まるような気がした。
また昔みたく、一緒にいれたらいいのに。
「それで、どうする?今日は泊まってく?」
「え?」
急に言われて一瞬固まる。
なんでいきなり?
「久々だろ?うちくるの。今日親いないし、泊まってけよ」
確かに、そうだけれども…
なんかいきなり泊まるってのも、ちょっと気恥ずかしいかも。
まぁ嬉しいけどさ。
「おばさんに連絡してさ」
そう言って俊は俺のスマホを指差す。
…まぁ確かに、断る理由もないし、言われた通りお袋にメールをする。
スマホのロックを外しながらも、顔がニヤニヤする。
あーやばい。
俺本当、久々に俊と話せて嬉しいんだ。
「それで、どこまでいったの?美弥チャンと」
「んーまだキスもしてないよ。スキンシップは結構してるけど」
メールを打ちながら答える。
まだ付き合い始めて1週間だし、あまりガツガツしているとも思われたくない。
「へ~……スキンシップって?」
聞かれて言い淀む。
「ん……」
「…………え?何?やぁらしぃアキ兄ちゃん!」
からかわれて言われると、ついムキになる。
こういうときだけ、昔の呼び方をして…!
「別にまだ何もしてないって!美弥がちょくちょく擽ってくるんだよ!」
途端俊は「え?」という顔をする。
「…く…すぐり?」
そういえば、昔よく俊にも擽られた事を思い出す。
「え、アキラが擽られてるの?擽る方じゃなくて?」
「な…なんだよ。悪いかよ?」
ニヤニヤしながら、俊が聞く。
「えーだって、アキラ女の子みたく喘いだりしてない?」
俊の言葉に顔がカッと熱くなる。
「な!んなわけないだろ!」
笑いながら顔を近づけてくる俊に、思わず顔を背ける。
「近い近い!!俊!」
「ねぇ、アキラ」
顔を近づけたまま、俊は笑う。
「勝負しようよ。昔みたいに、擽りっこ勝負」
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