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後悔した夏の日2
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大学に入学してからいつ頃だっただろうか…度々おかしな事が起こるようになっていた。
例えば、俺は物を失くすようになった。
本や文具、上着etc…
「ここに置いたはずなのに」と、記憶を辿っても見つからない。
不注意なのか、だらしないのか。
それとも、大学生にもなってイジメにでもあっているのであろうか。そう思った程だった。
その中でも飲みかけのペットボトルや缶ジュースは、失くすことが特に多かった。
最初はゴミだと思われて捨ているのかと思っていたし、本当に何処かに置き忘れてる可能性だってある。
だから、水筒を買ったのだ…。
しかし───
「聖君の女子力!!水筒ウケるー!」
と女生徒にからかわれながらも、夏を迎える頃には3個の水筒が消えた。
自転車のサドルがなくなったのも、丁度この時期だった。
「もしかして」と、頭を掠めたことは何度もある。
けれど、それはあまりにも俺の人生には無縁のことであったし、そんな自意識過剰な人間ではなかったから確信は持てなかった。
けれどついに、俺の杞憂を裏付ける、決定的な事が起こる。
───それは1週間前の事だった。
俺のアパートの郵便受けに投函された、切手の貼られていない封筒。
その中には…数十枚の俺の写真が入っていた。
それは全て学校での盗撮写真だった。
授業中、食堂、図書室…様々な角度で盗撮された写真。
まるで探偵の浮気調査のような隠し撮り。
我ながら何故これだけ撮られていて気づかなかったのかと頭を傾げる程だが、服装から見ても結構な日数に分けて撮られていることが分かった。
「何で…」
実際にこの写真を目の当たりにしても、これが『ストーカー』によるものだとは即座には受け入れ難かった。
「ふざけんなよ…クソッ…!」
タチの悪い、悪質な悪戯のまだマシだろう。
相手が女…だとしても怖い。
ストーカーとかマジ勘弁して欲しい…
写真は全て学校で盗撮されたものばかりだった。
直接アパートに投函されているのだから、相手も俺の住所まで調べ上げているとはわかっていたが…
犯人が同じ学校の敷地内に居るのなら、その構内で過ごすよりも、アパートにいる方がマシだと思ったのだ。
できるだけ、そのストーカーがいるであろう大学にはいたくなかった。
自転車を漕ぎながら、目前に迫ったアパートを見る。
比較的新しくて、綺麗なアパートだ。
値段もそれなりにするけど……
それは田舎の寂れた町工場で、必死に自営で働き仕送りをしてくれている両親に感謝することにしている。
アパートの1階はコンビニで、一人暮らしの俺には凄く便利で有り難いものだった。
……そして、5階建てのアパートの4階、角から2つ目の部屋が俺の根城になる。
「あ…?」
あれ…俺の部屋のカーテン、今動かなかったか?
見上げた先の自室。
薄緑のカーテンが、今一瞬不自然に波打ったような気がした。
キキッと、金属音を立てて自転車を停める。
ヒヤリと、背筋が冷たくなった。
それなのに、止まった瞬間から汗はブワッと吹き出てくる。
泥棒………とか?
「やめろよマジで…」
…なんとなく、嫌な予感がした。
部屋に戻るのが怖い。
ただの気のせいかもしれないとも思うが、最悪の展開を脳内で予測してしまう。
一瞬の葛藤。
纏わりつく熱気。息をすると温風が肺の中に入ってくる。
ジリジリと強すぎる太陽に、肌を焦がされそうだった。
ここで逃げるわけにはいかない。
ビビるなよ…ビビるな俺…!
逃げた所で、逆に逃げ場などないのだ。
再び漕ぎ出した自転車。
もしかすると、ただの気のせいかもしれないのだ。
そういい聞かせながら、自転車をいつもの場所に止め、アパートの入り口をくぐる。
管理人室を覗くが、今日に限って誰もいないようだった。
昼間なのに薄暗いエントランス。
節電の為にと消された電気。
不自然に着いた一部分だけの電気が尚更不気味さを演出している。
「…すいませーん」
念の為声をかけてみるが、返答はない。
なんだよクソッ…一緒に来て貰おうと思ったのに…。
やっぱり、管理人さんがいないのなら学校に戻ろうか…
そう思った時だった。
「ヒッ!!」
急にゴウンと鳴る機械音…
───エレベーターが動く音だ。
表示板を見ると、エレベーターが降りてくる………
ってことは、誰かが降りてくるのだろうか……?
3階……
まさか、俺の部屋の侵入者が……
1歩、2歩と下がり、エレベーターから距離を取る。
2階……
それでも、どんな奴が乗っているかだけは確認しておきたかった。
いざとなったら、全力で走ってコンビニまで逃げればいい。
1階……
でももし本当に犯人なら……取っ捕まえてぶん殴ってやりてぇ!
そして、エレベーターはチンッという場違いな音を立てて、ゆっくりとその扉を開いていく…
「あ……」
ストーカー野郎を想像して咄嗟に身構えるが……
その扉の先にいた人物は想像していたストーカーとはあまりにもかけ離れていた。
そしてそれは、最近良く見知った人物だった。
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