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後悔した夏の日6
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ようやく気持ちを落ち着かせ、言われた通りに部屋を確認できたのは、それからしばらく経ってからだった。
「手伝おうか?」
心配する先輩に「大丈夫です」と返し、ノロノロとした動きで部屋を見渡す。
明らかに部屋に侵入されているのだ。
真っ先に貴重品系の無事を確認する。
もっとも親の負担を考えてやりくりする貧乏学生に、盗まれて困るような高価なモノはないのだが…
あとは考えたくないけど、下着とかは無事かな……って……………あれ?!
「ぎゃっ!パンツがない!」
2〜3日分の洗濯物が溜まらないと電気代が勿体無いからと、カゴに脱いだ服を放置していたのだ。
その中から、昨日着ていたパンツが消えている。
「だぁー!!もうっ!!」
キモい!使用済み狙うなんて本当にキモすぎる!
本当に怖い!!平々凡々と平和に暮らしてきた人生の中で、今が一番怖いかもしれない!
この部屋には侵入者がいたのだ。
しかも写真の様子から、何日も前から浸入されていたことがわかる。
この数カ月で住み慣れた自分の部屋、それが突如全て汚らわしく思えてくる。
絶望的な気持ちで、風呂場の前で膝を抱えてしゃがみこむ。
もう、怖さとキモさで動けない。
「カメラ、見つからなかったよ?」
対して広くはない部屋。
玄関とリビングキッチンと寝室。
あとトイレと風呂ぐらいしかない。
でも、全てにカメラが仕掛けてあった。
俺が、気付かないうちに仕掛けられ、そして…外されたのだ。
下着がなくなったのはこれが初めてだった。
カメラを仕掛けた時には敢えて盗って行かなかったのだろう。
下手に物を盗んで、カメラの存在に気付かれないようにしたのだ。
「………聖、大丈夫?」
「う~~~せんぱぁい~」
「カメラはもう回収されちゃったんだと思うんだけど…」
先輩に手を引かれて立たされ、リビングへと連れてかれる。
「警察行った方がいいっすかね…」
怖い。
まじ怖い。
ストーカー怖い。
俺、めっちゃ泣きそう。
「うーん…そうだね…写真撮られてるし、これも証拠になるだろうから…ね」
そう言って先輩はテーブルの上の写真を数枚手に取る。
「やっ…」
その中にはよりにもよって、自慰をしている写真が…
「うわぁぁあああ!!!せせせんぱぁい!!!」
コイツ、本当はわざとなんじゃないか?!
写真を咄嗟に奪い取る。
大きい声出したせいか、なんかもう衝撃で完全に泣いちゃってるし。
「ほんと、勘弁してくださいっ……」
「どうして?警察に写真、見せないと…」
「う…」
「そのトイレの写真も、証拠としてはかなり強いんじゃないかな?」
「ぅぅう…」
「辛いかもしれないけど…ね?」
ヤダヤダヤダ!こんなの人に見られたくない!
ただでさえ男が、しかも俺みたいな奴がストーカーに合ってるなんてこと言えないのにっ!
「警察…は、行かなくていいです…」
「………そうなの?」
心配そうに聞かれて、頷く。
「無理しないで」と、また頭を撫でられる。
子供にするような動作に、凄く安心する。
やっぱ宍戸先輩、いい人だ。
「大丈夫です…」
反射的に答えたけど、本当に大丈夫なのだろうか。
もうこの部屋では普通に生活できないし。
「俺にできることあったら、何でも言ってね?せっかく部屋も隣りなんだから…」
部屋が、隣り…?
「乗りかかった船だし、俺も協力するよ」
「宍戸先輩…」
出会って2回目。
まだ先輩のことはよく知らないけれど…
それでも…
「今日…先輩の部屋に泊めて貰うことって、できません…か?」
俺は必死だった。
カーテンが動いたのは窓が開いていたせいかもしれないけど。
でも、誰かに進入されていることは明白だった。
今日こんなことがあったのに、また今までと同じようにここでは眠れない。
「あのっ、布団とか自分の持ってくので、部屋の片隅でもいいので少しの間匿ってくださいっ!」
迷惑は百も承知だった。
断られるかもという不安は大きかった。
けれど、俺にとって天の助けのような答えが返ってくる。
「…いいよ。俺は構わない」
駄目元で言ったのに、ニッコリと優しく笑う先輩。
「午後の講義が終わったら、迎えに行くね」
その言葉を聞いて、俺の涙腺は再び緩んだ。
「うっわー!先輩!有難うございますっ!!」
まじ本当、先輩女神様のようだ!
いやぁ、前回といい今回といい、本当悪いね宍戸先輩!助かるぜ!!
「へへっ…」
泣いたり笑ったり、俺ってば忙しい。
「あ、でも…」
午後の講義が終われば、一人暮らししてる友達も他にいるからな…
流石にあまり面識ない先輩の家に、図々しく上がり込むのは宜しくない、かな…?
今更だけど。
「やっぱり先輩…」
「俺の部屋、もともと寝泊り用だからね。
この部屋にいるのが怖い時はいつでも使って大丈夫だよ」
「……ハイ」
おっと、断れないゾ。
でも確かに、今日だけじゃないもんな。
実家にストーカーを理由に引っ越しを頼むのも難しいだろうし…
何より、俺がストーカー被害にあってるなんて言っても、うちの両親は信じてくれないだろう。
だからこれからのことを考えると、いざという時に隣りに避難できるのは便利で心強い。
「いつでも来ていいからね?」
「……ハイ!」
それでは、お言葉に甘えて便利に使わせてもらいます!
何より、先輩の次の一言が決め手となる。
「それに、本の話もしたいし…ね?」
ハハ…こんないい人から本横取りしてスミマセン。
「その節もどーも、お世話になりました」
俺は深々と頭を下げる。本当スミマセン。
「あと聖、今日のお昼、一緒にどうかな?」
昼飯かぁ…まぁ世話になるんだし…
「じゃあ俺、昼飯はご馳走します」
そう提案すると先輩も嬉しそうに笑う。
「そう…?それなら夕食は俺が出すよ」
「いえいえそんな!」
流石に寝床を提供して貰ってそれは申し訳ない…
「遠慮しないで、ね?」
「う…」
なんとイケメンな笑顔。
そう言えば先輩は実家も凄い金持ちと噂だし…
本当神様ったら不公平…。
こうなったら、快くお言葉に甘えましょう。
「よ…ろしくお願いしマス…」
「とりあえずそろそろお昼食べに行く?少し早いけど、混むよりいいだろう?」
エスコートされるように手を引かれて、俺は自分の部屋を後にする。
さて、このお洒落な男を何処に連れてこうか。
ご馳走するといったものの、お金そんなにないし…
「先輩どんなのが食べたいですか?」
あまり高級なものをリクエストされるのは困っちゃうなぁと思いつつ。
お世話になるからと思って覚悟を決める。
しかし先輩の答えは意外なものだった。
「そうだなぁ…最近牛丼食べてないからな…牛丼かな?」
わお!俺牛丼大好き!
そしてなんとリーズナブル!
喜んで有名チェーン店にお連れしてやろう。
「俺、洒落た牛丼屋なんて知りませんよ?」
「聖が好きな所でいいよ」
ハイ。勿論そのつもりデス。
エレベーターに乗り込み1階ボタンを押す。
狭いエレベーターの中、昇ってくる時よりも、先輩の距離が近いような感じがした。
触れるか触れないかの距離にある手。
昇る時には侵入者への不安で感じなかったけと…
先輩はいい匂いがして、俺は凄くドキドキしてしまった。
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