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後悔した夏の日8
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「さて、何が食べたい?」
『焼肉!』と即答したい所だが、昼間に牛丼を大盛りを食べたのだ。
先輩的にも流石にそれはアウトだろう。
「うーん…なんでもいいっス」
肉。ぜってー肉がいい。
何でもいいとは裏腹に、俺の内心は「肉」一色だった。
「……なんでもか。1番悩むな」
困った顔をした先輩は、それでも楽しそうに笑う。
きっと女の子とのデートでこんなのは頻繁にあるのだろう。
「イタリアンとか、寿司とか…。あとは肉料理が美味しい居酒屋とかもあるけど?」
「え?居酒屋?」
居酒屋!魅力的過ぎる!!
しかも、肉料理が美味しいとか、俺の為にあるようなチョイスだ!
明らかに目の色を変えた俺を見て先輩が声を出して笑う。
「じゃあ、居酒屋にしようか」
やったー!!
って、そうだ…
「…でも俺まだ未成年だから…飲めないんすよね…」
今の居酒屋って、確か年齢確認できるもの必要だったよな?
場所によっては私服警官とかもいたりとかするって聞くし…
それに俺、実はお巡りさんが怖いんだ。
昔、絵に描いたような雷オヤジの警察官が近所にいて。
またその警察官が親父と妙に仲良くって。悪戯小僧だった俺はしょっちゅう叱られまくっていたのだ。
だから、警察なんてまっぴらごめんだ。
…勿論、ストーカーの被害者としてであってもそれは同じこと…。
昼間の写真のことを思い出してしまい、一瞬気分が沈む。
クソッ…思い出さないようにしていたのに…
けれど俺の憂鬱な気分は、先輩の一声であっという間に解消されることになる。
「知り合いの居酒屋があって、顔が効くんだ。すごく優遇してくれるよ?」
「え!?…じゃあ是非っ!居酒屋でお願いします!」
顔が利くなら、もしかしたら身分証の提示もいらないかもしれない!
そうなると、俺の人生で初めてのお酒になる。
「少し距離があるから、俺の車で行こう。帰りは代行使えばいいし」
「じゃあ、代行代は俺が出しますよ!」
「いいよ。昼はご馳走になったしね」
そう言われても、牛丼屋と居酒屋では金額がかなり違うような気もするんだけど…
「少し早いから、図書館でも行こうかと思うけど…どうする?」
けれど話を変えられ、金額についてはあっという間に失念する。
「行きます!是非ご一緒させてください!」
何で先輩、こんなに俺の好みをついてくるんだ!
図書館は自転車では遠くて、普段はあまり行けないのだ。
車で行ければ楽チンだし、この街の図書館はかなり大きい。
だから学校に置いてない本も沢山ある。
「いやぁ~先輩、何から何までスミマセンねぇ~へへ」
学校の図書室で借りた本はまだ残ってるけど、明日から夏休みだし…多めに借りても大丈夫だろう。
先輩の高級車(祖父からの成人祝いだとか)に乗せられて、向かった図書館。
先輩とは本の趣味が凄くあった。
「でも、聖の方がずっと詳しいね?オススメあったら教えて?」
そう言われて、意気揚々と厳選して選ぶ。
昔読んで面白かった本とか、ちょっと子供っぽいかなって思う本まで、先輩は快く受け取ってくれる。
なんだよも~めっちゃいい奴じゃん!
「図書館っていいですよね!買わないから失敗しても痛くないし!あ、でも気に入った本はちゃんと後で買いますよ!何回でも読み直したい派だから!」
「俺も、気にいるとずっと手元に置きたいタイプだから、その気持ち良くわかるよ」
「そうっスよねー!」
先輩はどんな本を思い浮かべて言ったのだろうか。
一瞬物思いに耽るような顔をしていた。
「先輩のお勧めの本も、今度教えてくださいね!」
誰かと一緒に本を選ぶのを、こんなに楽しいと思ったのは初めてだった。
その楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
19時近くなると、図書館の音楽が変わる。
「あ、もうすぐ閉館ですね…お店混んじゃいますか?」
「いや、個室を予約してあるから大丈夫だよ」
おお。先輩、抜かりねぇな。
「んじゃ、改めてご馳走になりますっ!」
まぁ、人並みの食欲はある方だけど、少しは遠慮して食べようと心に決める。
「勝手にコースで頼んじゃったけど、よかったかな?」
「え…?」
コース?!フルコースみたいなやつか?!ヤバい、高級な店だったらどうしよう…!
「飲み放題のコースなんだけど…料理付きの」
「おお!そういうことか!」
先輩、やっぱ抜かりねぇな!
これはモテるわけだ!
「知り合いの店って言っても、大手チェーン店だから大丈夫」
へ~居酒屋初めてだからよくわかんないや。
「料理もサービスしてくれるだろうし、お酒、飲み放題だから」
お酒の飲み放題……大人って感じだな!
「でも、あんまり飲みすぎちゃ駄目だからね?」
「うっ…はいっ!」
確かに、酔いつぶれでもしたら先輩に迷惑をかけてしまうとも思うが…
初めて飲むから自分がどれだけ飲める人間なのかもわからない。
「俺、すっごい楽しみっスよ!先輩!」
そう笑いかけると、先輩は凄く嬉しそうな顔をして笑い返してくれた。
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