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出会い-2
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その男の人は紅茶を一杯頼み、雨が降っている窓の外をぼんやりと見つめている。
「雨、止みませんね...」
その横顔があんまり綺麗だったから、気が付くと雛は店のテーブルを拭いていた手を止めて、彼に話しかけていた。
人見知りの雛が初対面の人に話しかけた事に、店長が驚いた様に雛を振り返ったのが見えた。
「そうですね、一応傘は持ってるんですけど...どうもこの雨の中歩く気になれなくて」
いきなり話しかけたのに嫌な顔ひとつせず答えてくれた彼の声は優しく、落ち着いている。
「いいですよ、いつまでも雨宿りしていて」
「ありがとうございます」
店長の言葉に優しく微笑んで軽く頭を下げる彼。
優しくて礼儀正しい人なんだなぁ...
「雛くんも、そろそろ上がっていいよ。傘は持ってきてるかい?」
「あー...忘れてきました...まさかこんなに降るなんて思ってなくて」
「しっかり者の雛くんにしては珍しいね。ちょっと待っててね、もう随分前にお客さんが忘れて行った傘がある筈だから」
雛の為に店の奥へ傘を探しに行った店長。
ホールに残されたのは雛と穏やかな彼。
静かになった店内で彼は雛を振り返り、訊ねた。
「もう帰るんですか?」
「はい」
「家はここから近いんですか?」
「へ...?」
「送っていきますよ」
「え?」
「俺もそろそろ出ようかと思ってたところなので」
「え、あの...」
「お客さん、雛くんを送っていってくれるんですか。可愛い雛くんを送ってくれるなら、安心ですね。はい雛くん、傘はこれ使ってね」
「て、店長...っ」
いつの間にか戻ってきていた店長は雛に傘を渡しながら、ニコニコと男に話している。
「雨も降ってますし...もし、ひなくんがよければ...ですけど...嫌ですか?」
「...っ」
ど、どうしよう...初対面の人に送ってもらうなんて...
「ふふふ、迷っているね、雛くん」
「そうですね、少し意地悪が過ぎたでしょうか」
戸惑っている雛を見て、目を合わせて悪戯っぽく笑う2人に雛は更に戸惑う。
どういうこと...?
「え...、あの...」
紅茶のカップを静かに置いた彼は真っ直ぐに雛の瞳を見据え、一層優しい笑顔で言った。
「率直に言いましょうか...俺は君とお近付きになりたいんですよ」
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