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「今日も行くのか?」
洗濯してあった雛の服が乾いた頃、嵐は唐突に雛に訊ねた。
部屋の片付けをしていた雛は振り返って聞き返す。
「大介さんのところ?」
「ああ」
「勿論、行くよ。今何時だっけ?」
「10時くらい」
「そっか、じゃあもう少ししたら行くね」
笑顔でそう言った雛は再び掃除に戻る。
毎日掃除機をかける程度の掃除しかしてこなかった嵐の部屋の隅々を拭き掃除してくれている雛の背中をぼんやり見つめながら、昨夜のことを思い出していた。
俺の気持ちはどこまで伝わってんのかな。
アイツのところに行ったら雛は、俺のことを忘れてまた泣くのかな。
「雛」
「んー?」
「...」
「らんちゃん?」
再び手を止めて不思議そうに嵐を振り返った雛。
「いや...何でもない...気を付けて行ってこい」
「うん、ありがとう」
「行くな」なんて言える筈がない。
どんな思いで、雛が毎日生きてるのか知ってるから。
「...たまには大学にも顔出せよ」
言いかけた言葉をぐっと飲み込んだ嵐は、代わりに2人が在籍している大学の話を振った。
「あー...はは、うん」
その言葉に雛は苦笑する。
「皆心配してる」
大介が入院してから最低限しか大学に行っていない雛。
なんとか進級するための単位は足りているが、今年はほとんど大学に来ていない。
このまま辞めてしまうつもりなのではないかと嵐は危惧していた。
「留年すると親にも迷惑かけちゃうしね...そろそろまた顔出すよ」
「うん」
「...僕、また頑張れるかな」
また、そんな顔して...
誰が頑張れなんて言ったんだよ、お前はもう頑張ってるよ。
「馬鹿。頑張らなくていい」
「らんちゃんは優しいね」
「んー...どうだろうな」
本当に優しい人間は、今の状況でお前に好きだなんて言ってないよ、雛。
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