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それから気の済むまで泣いた雛は、少し落ち着いてきたところで布団から僅かに顔を出した。嵐はすぐに気が付いて柔らかな視線を向けてくれる。
「やっと出てきた」そう言って笑う嵐の笑顔が、暗く陰っている雛の心を少しだけ照らした。
僕、すごく救われてるなぁ...
のそのそと雛がベッドから起き上がれば、大きな嵐の手が少し乱れた雛の黒髪を梳く。それが心地良くて無意識のうちに目を閉じて嵐の手に擦り寄ってしまう。
飼い慣らされた猫のようなその仕草に、嵐が困ったように笑ったことを雛は知らない。
「落ち着いた?」
ふいに嵐の声が聞こえて雛は再び瞼を上げた。
「…ん、ごめんね」
「いい。慣れてるし」
「う...」
慣れてるって...僕そんなに泣いて...る、か...
返す言葉もないと俯く雛は、頭から温かな体温が離れて行ったのを感じて顔を上げる。
見えたのはさっきまで見ていたのとは違う、少しだけ真剣な表情になった嵐。
「雛…昨日の事覚えてるか?」
「待合室にらんちゃんが来てくれたところまでしか…僕、迷惑かけてた?」
「いや、あの後手繋いでやったら普通に歩いてたし迷惑ではなかった。まあ、ボーッとしてたけど」
「そっか…」
「…聞いてもいい?」
何を、なんて聞かなくても分かっている。
本当は思い出すのも苦しい。だけどいつも助けてくれるらんちゃんには、ちゃんと言わなきゃ。
膝の上に作った握りこぶしにぎゅうっと力を入れ、雛は震える唇を開いた。
「…明子さん…大介さんのお母さんにもう病院、来るなって言われて」
「うん」
「多分、大介さんにはもう…会えない」
「なんで、いきなり…」
切れ長の目を見開いて驚いている嵐。
どうしてかその瞳を見ていることができなくて視線を逸らした。
「...お前はそれでいいわけ?」
嵐のその問いは、雛の心の一番柔い部分に突き刺さる。
それでいいか、なんて
いいわけない
大介さんの傍にいたいよ
だけど、そんなこと...誰に言えるの...っ
「……っ、わかんない……だって、もう……っ」
それっきりまた涙が止まらなくなってしまった僕のことを、らんちゃんは何も言わずにずっと抱き締めてくれた。
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