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1-1side嵐
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あの日から1カ月。
季節は夏から秋へと変わろうとしている。
雛は良い部屋が見つかるまでという条件付きで嵐のアパートで生活している。
突然決まったことで、雛の両親は反対するものだと思っていたが昔から馴染みのある嵐の部屋ということで特に反対はされなかった。
元々一人暮らしには少し広いと思っていた部屋に、他でもない雛が生活しているというのは嬉しいけれど、少しつらい。
報われないことなんて分かってるはずなのに。
「らんちゃん、遅い!もう食器も片づけちゃったよ!」
「っせーよ。まだ講義まで時間あんだろ」
「だーめ!今日は紫藤(シドウ)くんにノート見せてもらうんだもん」
「紫藤?なんであいつなの」
「らんちゃんが真面目にノートとってないからでしょう?ほら早く準備して!」
「はいはい」
ぱたぱたと忙しそうに部屋の中を動く雛を見て、嵐は苦笑した。
朝からぴよぴよ五月蠅くて、名前の通り鳥みたいだ。
「雛」
忙しない背中に声をかけると、くるりと振り返る雛。
「跳ねてる」
雛の髪を片手で撫でつけると、雛は照れたようにふにゃりと笑った。
「ありがと、らんちゃん」
そのまま抱きしめたくなる気持ちをぐっと抑え込んで、嵐は大学へ行く準備にとりかかる。準備と言っても、持っていくものは財布と携帯くらいのものだが。
雛が毎日病院に通っていた頃はさぼりがちだった大学は、毎日雛に急かされて行くようになった。
毎日8時前に起こされては、雛の手料理を食べて学校へ行く。嵐にとっては夢のような、生殺しの毎日だ。
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