アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3ー06
-
孝のらしくない行動に再び困惑してしまう。
「こ、孝ッ何して…」
「聞かないから!」
「…!」
「何があったかは聞かない…だからせめて、俺の為にこうさせてくれ…」
苦痛に満ちた孝の震える声と、俺を抱き締める力強い腕。
……俺の為って、何だよ。
「何で孝の方が、苦しそうなんだよ…」
「………兄弟だからな」
「…はは。意味…分かんね…っ」
本当にワケが分からない。
分からないけど…きっとお前なりに俺の事、心配してくれたんだよな。
…ごめん、ありがとう。
『圭……!』
「…っ」
その時、最後に見た透也さんの悲しそうな顔がフラッシュバックし、またあのどうしようも無い感覚に襲われる。
…怖くなったんだ。
よく知ってる筈のあの人が、まるで別人の様に見えた。
それにあの先にある「なにか」はきっと、俺達の関係を変えてしまう気がして。
そこに踏み込む勇気が無かった。
だから…逃げ出してしまったんだ。
けどそのせいで、あの人に悲しい顔をさせてしまった。
あんな顔、させたくなかった。
傷付けたく…なかったのに。
心が、痛過ぎて吐き気がする。
「…ぅ、くっ…」
張りつめた緊張の糸が切れるように、押し殺していた感情が涙となって溢れ出した。
そんな情けない俺を、孝はただ何も言わずに抱き締めてくれた。
俺は、孝のその優しさに助けられてばかりだ。
甘えてしまってゴメン…だけど、今だけは。
どうか今だけは、許して欲しい。
そして俺は…いつしかその腕の中で、静かに意識を手放していた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
24 / 68