アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
その執事、花見
-
ある日の昼下がり。
仕事が一段落着いたシエルは机に突っ伏して眠っていた。
・・・ガチャ。
(おや・・・?眠ってしまっているのでしょうか?)
セバスチャンはシエルに近づくとシエルの目にかかった前髪を横に掻き分けた。
(クスッ・・・どんな子供も眠っているときは天使のようだ、というのはあながち間違っていませんね。ですが・・・)
「坊っちゃん・・・坊っちゃん、起きて。」
「・・んぅ・・・・セバスチャン・・・?どうした、もうおやつの時間か?まだ早いだろう・・・」
「ええ。今日はちょっといつもと違う趣向を凝らしてみました。お庭にお出でいただけますか?マイロード。」
「庭に・・・??」
「これは・・・っ!?」
驚きの声をあげたのはシエル。
それもそのはず。昨日までなかったはずのものがそこにあったのだから。
「気に入っていただけましたか?日本より取り寄せました桜、ソメイヨシノでございます。」
「きれいだ・・・。だが、どうしてまた急に・・・?」
「タナカさんに伺ったのですが、日本では春になり、桜の咲く季節になると“お花見”と言って、咲き乱れる美しい桜を愛でながら観賞する行事があるそうで・・・是非坊っちゃんのおやつのお伴にと思いまして。・・・それに最近坊っちゃん、お疲れのようでしたしね。」
「セバスチャン・・・。」
「坊っちゃん・・・っ。」
「・・・早くおやつ。」
「・・・えぇっ・・・!?」
(これが噂に聞く、花より団子ですか?)
「えぇっ!?じゃないだろう。早くしろ。」
「もうちょっと他に言うことないんですかっ?すごい!とか僕のためにわざわざありがとう!とか・・・っ」
「さっききれいだと言っただろう。それにこの桜はあくまで僕のおやつのお伴なんだろう?主役はおやつじゃないか。」
「・・・たしかに言いましたけど、もう少し感動が欲しかったです・・・。」
セバスチャンはがくっと項垂れた。
「では、坊っちゃん。おねだりしてください。」
「はあ!?なんでおやつ食べるのにおねだりしなきゃいけないんだ!しかもお前が言ってるおねだりって・・・」
「ええ、いつもの“命令”ではない方です。さあ、坊っちゃん。そっちのおねだりの仕方も教えたでしょう?おやつが食べたいなら仰ってください。」
「・・・チッ。セバスチャン、お、おやつ・・・ちょ・・・ちょーだい?//」
「坊っちゃあああんっvV」
ガバッ!
「それはもういいからっ!///ちゃんと言ったんだから早くしろ///」
「・・・本日のおやつはお団子でございますvV」
「//それも日本のか・・・?」
「はい。お飲み物は紅茶でなく、いつもタナカさんが飲んでいらっしゃる緑茶をご用意いたしました。」
「そうか。」
ぱくっ。
モグモグモグ。
(モグモグしてる坊っちゃんかわいい・・・っ!)
と横で鼻の下を伸ばしている執事にシエルは瞳を輝かせて言った。
「コレ、美味いぞ、セバスチャン!」
「それはようございました。」
「せっかくの花見だ。僕1人で食べてもつまらない。お前も食べろ。」
「私はあくまで執事ですから。主人のおやつをいただくなど・・・」
「・・・命令だ、食え。」
「イエス、マイロード。」
(私は人間の食べ物など、美味しく感じないのですが・・・。そうだ・・・)
「では坊っちゃん、お団子をおひとつ、お口にくわえてください。」
「・・・?」
ぱくっ。
訳がわからないまま、お団子をくわえるシエル。
「では、いただきますvV」
チュッ
「ふぅっ!?//」
「ご馳走様でしたw」
「~~~貴様っ///もうお花見なんてしないからなっ//今度からお団子だけでいいからな!///」
(・・・お団子は相当お気に召したんですねw)
もう部屋に戻る!
とプイッと背中を向けて部屋へ向かうシエルの耳が真っ赤で、しかし口元に幸せそうな笑みを浮かべていたのを、また怒らせてしまった・・・と1人苦笑していた執事は知らない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 21