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その主人、不安
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セバスチャンと想いが通じあってから、あいつは僕への気持ちを隠そうとしなくなった。
一緒にいればニヤニヤしながら頬擦りしてきたり、キス・・・してきたり・・・//
恥ずかしくてとてもじゃないが、嬉しいなんて言えなかった・・・むしろ邪険に扱ってしまった。
でも、あいつはそんな僕の気持ちをちゃんとわかっててくれてるって思ってたんだ。
何度冷たくあしらっても、
「本当は坊っちゃんも嫌じゃないんでしょう?」
なんて言って、懲りずに同じことを繰り返してきたんだから。
でも、最近パッタリそれが止んだ。
まるで・・・そう、ただの主人と執事に戻ったみたいに。
なぜだ・・・?
僕が冷たくしたからか?
それとも・・・・こんな僕にもう愛想を尽かしたのか?
考えれば考えるほど、悪い方向に考えてしまう。
(こんなの、僕らしくない)
やめだやめだ!
頭をふるふると振る僕をセバスチャンが怪訝そうに見ている。
「坊っちゃん?どうなさいました?」
「別に・・・なんでもない。」
セバスチャンはまだ何か言いたそうな顔をしていたが、ため息をついて仕事に戻った。
(あ、また・・・。)
素直に聞けたらいいのに。なんで最近素っ気ないの?なんで最近キスもしなくなったの?って。
でも、そんな子どもっぽいこと聞けない。
それに、もう飽きたって言われるのが・・・怖いんだ。
・・・ちょっと、頭を冷やそう。
「セバスチャン、少し出てくる。」
「では、私もお供いたしましょう。」
「少し庭を散歩して来るだけだ。1人でいい。」
「・・・御意。」
シエルの心の中とは裏腹に、まさに春真っ盛りの温かくて清々しいお散歩日和だった。
木々や草花も綺麗に整えられていて魅力的だが、どれもシエルの眼には映らない。
「セバスチャン、なんで最近素っ気ないんだ?・・・」
(本人がいなければ言えるのにな・・・)
シエルが自傷気味に笑う。
そんなことを考えながら歩いていると、誰かの話し声が聞こえてきた。
(・・・セバスチャンッ!?)
思わず茂みに隠れた。
「嗚呼、やはりあなたは可愛らしいですね。美しい漆黒の毛に、抱き心地の良い身体・・・何より余計なことをしゃべらないのが良い。あなたは私の癒しですv」
シエルのいる場所からはセバスチャンと一緒にいる相手が誰なのか見えない。
でも、誰かと逢瀬しているのには変わりない。
(・・・・っ)
シエルはそれ以上聞いていられなくて屋敷に戻った。
「おや、もう行かれるのですか?」
「ニャー」
「また明日お待ちしていますよ。」
(さっきのは・・・?やっぱり僕に愛想が尽きたんだ。もう新しい相手がいるんだ・・・)
シエルは悲しくて苦しくて、涙が出てきた。拭っても拭っても止めどなく溢れてくる。
(これが失恋か・・・。)
そのとき・・・
ガチャッ
「!?」
突然セバスチャンが部屋に入ってきたので、シエルは泣いているのを見られたくなくて俯いた。
「坊っちゃん、お戻りですか?ちょうどよかったです。アフタヌーンティーにいたしましょう・・・って坊っちゃん?どうなさいました?」
シエルが俯いたまま一言も発しないので、セバスチャンがシエルの方にやってきた。
「・・・来る・・な・・・っ!」
「坊っちゃん?本当にどうなさったのですか?・・・泣いておられるのですか?」
「・・・グスッ・・・泣いてなんか・・・っ」
ギュッ
ふいに、セバスチャンに抱きしめられた。
「・・・ほら、シエル。お話しください。」
ポンポンとあやすように背中を叩きながらシエルに言う。
シエルはグイとそれを押して、セバスチャンから離れた。
これ以上くっついていたら、その腕にすがり付いてしまいそうで・・・愛されている、と錯覚してしまいそうで・・・。
「・・・シエルなんて呼ぶな!・・・お前はもう、僕のことなんか好きじゃないんだろう!?」
「・・・え?突然何をおっしゃるんです?・・・愛しているに決まっているじゃありませんか。」
「うわべだけの言葉なんていらない!・・・僕は見たんだ。」
「何をです?」
「・・・さっき僕の散歩中に、知らない誰かと会っていただろう。」
「坊っちゃんの散歩中に・・・?誰ともお会いしていませんが・・・」
「嘘つくな!そいつに・・・可愛らしいとか言っていただろう・・・・?」
「可愛いらしい・・・?」
はて・・・?とセバスチャンは顎に手を当てて考えている。
やがて何か思い当たる節があったらしく、肩を振るわせて笑い出した。
「・・・ふっ・・坊っちゃん・・も、申し訳ありません・・・っ、私、確かに貴方の知らない方とお会いしておりました・・・」
「何がおかしい!やっぱり会ってたんじゃないか!」
「時に坊っちゃん、私がその方と会っているところを本当にご覧になったのですか?もしかして、私の声を聞いただけなのでは?」
「う゛・・・。」
そう言われてみれば、見たわけではない。相手の顔どころか、セバスチャンの顔すらも見なかったのだ。
「それが何だ。見てなくても聞いた言葉だけで十分だ。」
「いえ、そこが重要なのです。やはりご覧になったわけではなかったのですね。では、私がどなたとお会いしていたのか、教えて差し上げましょう。」
「いやだ!そんなの、聞きたくない・・・っ!」
「猫です。」
「・・・・・・・は?」
「だから、猫です。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「はあぁぁあ!?」
「坊っちゃん、人間だと勘違いされていたのでしょう?」
「だって・・・っ、だって・・・・・・っっ」
『嗚呼、やはりあなたは可愛らしいですね。美しい漆黒の毛に、抱き心地の良い身体・・・何より余計なことをしゃべらないのが良い。あなたは私の癒しですv』
漆黒の毛・・・髪の毛じゃなくて、猫の毛?
余計なことをしゃべらない・・・猫だからしゃべれないだけ?
・・・・っ!!
(は、恥ずかしいっっ///死にたい・・・っ/////)
ハッ!
「で、でもっ、最近素っ気ないじゃないか!・・・キスもしてこないし・・・こっちはどうやって説明するんだ?」
「素っ気ないですか?最近坊っちゃんはファントム社の新企画の件でお忙しいので、なるべく負担にならないように・・・と。」
(僕を気遣って・・・?)
それを聞いて、一気に身体の力が抜けるようだった。
「う・・・っ、グスッ・・・セバァ・・・・セバス・・チャン・・ッ」
今度はシエルから抱きついた。
「貴方を気遣ったつもりが、逆に不安にさせていたのですね。申し訳ありません。」
「僕が素直じゃないから・・・っ、嫌いになったのかと思って・・・・・」
「そんなこと、あるわけないじゃありませんか。貴方が私のことを大好きなの、ちゃんとわかっておりますから。」
セバスチャンに抱き上げられて、背中を擦られる。
「うっ・・・ヒクッ、嫌いに・・・ならないで・・。」
「大丈夫だから・・・泣き止みなさい・・・、ほら。」
「・・・ふぇ・・、セバスチャン・・・///」
シエルが自分から目を閉じ、口をつきだしてきた。
「シエル・・・。」
チュッ
「ふっ・・・ん・・///」
「しかし、坊っちゃん。猫に嫉妬するなんて可愛いですねv」
「うるさいっ//・・・僕より猫の方が可愛いんだろ?」
「クス、そんなわけないでしょう?貴方が1番ですよ、シエル。」
「なら・・・いい///」
「もう・・・坊っちゃあああんv」
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