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イベント発案(龍之介side)
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「なぁ、何かイイ案ない?」
生徒会執務室で日課の武器の手入れに勤しんでいると、イベント担当のマコトがガシガシと明るい色の髪をかき乱しながら、難しい顔で聞いてきた。
桜華は通常の学園とは存在意義からして異なるため、生徒会の役割も自ずとかなり特殊なものになる。
まず第一に好き勝手に運営していいとの許可をオーナーであるリンから取りつけているため、誰に何を報告する義務もない。
おまけに潤沢な資金があるから、せこせこと会計の収支を合わせる必要もない。
よって書記あるいは会計といった通常あるべき業務は不要となり、力を入れるべきはセキュリティーを含む学園内の自治、閉塞した環境でも極力息のつまらないお楽しみ、つまりはイベント事の定期的な創設、いざという時の救急対応となる。
そこはもう適材適所で、自治担当を情報関係に強いハルトが、救急担当を医学に秀でたルイが、そして残る以前発案がマコトが受け持つことになったわけなのだが。
「隔週のイベント発案とか、マジで無理! スケジュールタイト過ぎて過労死したら、誰が責任とってくれんだよ?」
1人だけ適材適所の網からこぼれてしまったマコトは、期限が迫るたびにルイからキツイ突き上げを食らい泣きついてくる。
「……未だかつてオマエがミッション以外で寝不足してンのなんざ、見たことねェが?」
冷たい目でを向ければ、途端にマコトの目が泳いだ。
「う? ん……ない……、かな?」
あははと笑っても、周りの空気は冷たいままだ。
マコトはそもそも時間に対する概念が緩い。
ミッションの際だけはきっちり動いてくれるから大目に見てはきたが、平気で遅刻はするしスケジュールも破る。
おまけにこうしてギリギリになってできないと騒いだ挙句、外野に頼れば何とかなると思っている節がある。
直情的に突っ走っていればどうにかなると思っているヤツは、これだから厄介だ。
とは言え大抵はない頭でそこそこ考えている。
飽きっぽいためゴールまで行き着くのが稀なだけで。
一応は役割を果たそうという意思はあるのだ。
そう思わなければやっていられないと思いながら聞いた。
「……で? どンなン考えてンだよ?」
「サバイバルゲームとか面白いと思ってたんだけど、例の刺客情報で完全にボツったろ?」
「……そりゃまァ、災難だったな」
「ホントだよ! 敵に堂々と武器とか持たせらんないし、チーム戦すげー楽しみにしてたのに、マジムカつく!」
「あー、うるせェ。なら同じ系統で、トレジャーハントとかどーよ? 途中の通過ポイントにヒントとかお宝隠せば、サバイバルゲームのレールそのまま活かせンだろ?」
目をパチクリさせたマコトが、
「それ最高! だからリューって大好きだ!」
首にギューギュー抱きついてくる。
「わかったから、離せ」
世話を焼いて首絞めとはどんな冗談だと、華奢なくせに驚くほど怪力な身体をやっとのことで退けた。
とは言え、トレジャーハントか。
ふと思いついて、つけ足した。
「商品決まってねェなら、天体望遠鏡にしてくんねェ? 100万くれーのいいヤツで」
「ブッブー。予算オーバーです!」
「金ならリンに出させりゃいい」
「ホント、リューはタカり上手だし、リンさんはリンさんでリューに激甘だからなぁ」
「いーンだよ。アイツはかわいがってるオレのお願い聞けて満足、オレも助かる。誰も損しねェんだから」
金は天下の回りもの。
あるところにはあり余るほどあるのだから、必要に応じて利用して何が悪い?
「で? 望遠鏡なんて何に使うわけ?」
「お姫様がご所望なンだよ」
「お姫様って、克己?」
「そ。なぁンか煮詰まってっから、ちょいガス抜きさせてやろーと思ってよ」
「ニンジンぶら下げて走らせるんだ?」
実際は克己と士郎をペアで走らせることによって、二人の関係の修復を図ることが目的なのだが、そこまで言う必要はないだろう。
「ンじゃまァ、頑張れ」
頭をくしゃ、と撫でてやりつつ、席を立つ。
「えーっ、もー行くのかよ?」
すがりついてくる腕を、護身術の要領で力を逃がして外した。
「オレぁ忙しいンだ。そのうちご褒美やっから、イイ子にしてろ」
「じゃあ、また訓練後のシャワーがいい!」
「エロガキが。……わかったよ」
「いつ!?」
「時間作るから、ちょい待て」
約束してやることで、とりあえずは納得したのか、マコトはそれ以上追ってこなかった。
だが、席におとなしく座っていたハルトから妙な気配が漂っているのを感じて、頭を抱えた。
「……絶賛発情中かよ。次から次へと、ったく、勘弁しろって」
普段はおとなしいハルトだが、発情した途端、妙なフェロモンを振りまき始めるのは今に始まったことではない。
別に1人サカっているだけならいいのだが、仕事の効率は落ちるし、ルイのイライラには拍車がかかるし、いい事は一つもないのだ。
いっそ、マコにハル抱かせてみっか……?
ヤッている二人を後ろからアレコレいじってやれば、二人も満足するだろう。
いっぺんに片づく上に、新たな発散ルートを提示してやれる点でも、これは買いだ。
頭の中のお試しリストに載せながら、今度こそ足早に執務室を後にしたのだった。
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