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心配(龍之介side)
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「……悪ィ。遅くなった」
執務室に戻ると、勢いよく抱きついてきたマコトが、スンスンと鼻を鳴らし、眉を寄せた。
「……一晩中、お楽しみだったみたいだね」
石鹸の匂いがいつもと違うことに気がついたのだろう。
言葉の端々にトゲがのぞく。
「まーな。……はァ。さすがにちょい、寝不足でダリィ。さっさと終わらせて、横になりてェ」
制服の上下を脱ぎ捨てて、アンダーおよび緑と茶系の迷彩服の上下に着替た。
そうこうするうちにも、今頃士郎がどんな顔をしているかと思うと、思わず口元がニヤけてしまう。
「……ダラしない顔」
マコトの冷たい視線とぶつかり、ヤベェと慌てて表情を整えた。
「……ンだよ、オレが色関連でミッションしくじったコトあったかよ?」
「……ないけどさぁ」
「心配すンな。見た目よりボケちゃいねェ。カラダもキレてる」
自身、士郎に入れ込み過ぎでいる自覚はあった。
だから、ここに来る前に一汗流し、戦闘モジュールでバーチャル訓練にいそしみ、しっかり頭も切り替えてきた。
やるべきことをやっている以上、プライベートをどうこう言われる筋合いはない。
やがてマコトが腰に両手を当てたまま、天井をにらんだ。
「別にオレが一緒に行けるならいーんだよ。死んだって護るから。けど、今回は単独行動だろ?」
「陽動作戦なんだ、エサはオレっきゃいねーだろーが」
「そーなんだけど! わかってんなら、カラダのメンテ、しっかりやってくれよ」
よりによって、こーゆー日に朝までヤリまくるとか、勘弁してほしいと、マコトの怒りはおさまらない。
「あとそのニヤけた面もムカつく」
「あー、こりゃ、しばらくはムリかもなァ」
アゴを擦りながら、笑った。
「そんなによかったのかよ?」
「そりゃもう、サイッコーにな」
「カラダが?」
「カラダってより、こっちだな」
言って、親指で胸を指す。
「どーせすぐ飽きるくせに」
その熱は一過性のものだと、マコトだけではなくチームの全員が思っているだろう。
ミッションの熱が冷め、手を汚した罪悪感が薄れる頃、憑き物が落ちたように恋心も冷める。
今のこの浮き立った気分も、やがては跡形もなく消え去ってしまうのかと思ったら、一瞬一瞬がひどく貴重なものに思えて、士郎と離れている時間がいつにも増して苦痛に思えた。
「援護、期待してっからな」
ポンポン、と、未だ納得していないマコトの明るい色の髪を撫でて、背を向けた。
今回は学園内での隠密行動になるため、愛用のサブマシンガンは持っていけない。
代わりにナイフや特殊ワイヤー、万が一のためのサイレンサー付きのピストルで武装する。
「しっかり追跡頼んだぜ」
出がけにハルトの黒髪も同じように撫でてやると、
「気……つけて」
注意していなければ聞き取れないほどの頼りない声が返ってきた。
「おう」
「……オレには挨拶もなしか?」
「あー、悪かったって」
ブスくれるルイに苦笑して、金髪頭を撫でてやる。
もういいだろうと横を通り過ぎた瞬間、背後から抱きつかれて、ヌッと口の中に指を二本突っ込まれた。
「……ン」
ねっとりと、オレンジの甘い味が広がった。
「ビタC補充、完了」
ルイが濡れた指先を引き抜いて、自らの舌をはわせながら笑った。
「ホントは点滴を打ってやりたいが、時間ねーし。応急処置と思って、舐めてけよ」
サンキュ、と片手を上げて、行くか、と気を引き締めた。
部屋を出がけに執務室に戻ってきたユージンの冷たい横顔とすれ違う。
コイツが敵か味方かによって、今後の動きもだいぶ変わってくる。
向こうがアクションを起こさないなら、こちらから行くべきかと思案しながら、幾重にも施されたセキュリティーを抜け、屋外に出た。
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