アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
違和感の正体(龍之介side)
-
目標地点に着くと、すでに戦闘は始まっていた。
戦闘といっても高校生同士のケンカ程度の、殴る蹴るといったレベルのものだ。
結果はあまりに一方的だった。
見惚れるような身のこなしと、的確な読み。
普段のワタワタした態度からは考えられないほど、達也は落ち着いて見えた。
あれは急場で化けるタイプだ。
本当に大切なものを迷わず選び取る。
戦闘レベルも、命のやりとりを日常にする自分からしてみれば甘いところも多々目につきはしたが、大切な人間を暴力から守るのであれば充分合格点をやれる。
任せて大丈夫だと言った士郎の言葉が腑に落ちた。
同時に、達也に感じていた違和感の正体もはっきりとした。
「……なかなか、やるじゃねェか」
あれは相当に鍛えている。
空手でも、かなり実戦に近い部類だ。
思えば腕を整復された時、見た目にそぐわない鋼のように堅い身体だと感じた。
何より、関節を外された演技することに気を取られていたとはいえ、この自分が誰かに意図せず身体を預けるのは珍しい。
警戒心の欠片も起こさせない、平和そのものの空気感は独特のものだ。
あの時、無意識に任せても大丈夫だと判断していた。
下手な関節の入れ方をされていれば、ダメージが残ったことを思えば、けっこう大胆な真似をしたものだと思うが、それくらいあの時の達也からは、ある種の自信と安心感が感じられた。
とその時、回し蹴りを決めた達也の顔から、遠心力に負けた厚底メガネが転がり落ちた。
途端に、これで謎はすべて解けたと苦笑する。
ぽわわんとした雰囲気に、この強さ。
そして、周りが放っておかないだろうルックスの三拍子がそろえば、今後人気に火がつくのは明らかで。
克己も苦労すると思った矢先、達也がこちらに気がついた。
かなりの距離を保ち、気配も殺していたつもりだったが、なかなかどうして大したものだ。
敵意はねェよ、と片手を上げて挨拶すると、ペコリと律儀に一礼を返してきた。
その後、達也の素顔に気づいた克己と慌てた達也が揉め始めたが、痴話喧嘩は勝手にやってくれと呆れながら、その場を後にした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 261