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返信(士郎side)
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カーテンの開け放たれたバルコニーの外は夕陽も沈み、夜の帳が降りようとしていた。
大抵の生徒がトレジャーハントから帰還したのか、廊下からは夕食前のかすかなざわめきが伝わってくる。
朝からずっと寝ていたせいか熱も下がり、だいぶ身体が楽になっていた。
それでもやはりかなりのダメージが残っているのか、うつらうつらしていたところに、克己からメッセージが届いた。
『達っちゃんの部屋に泊まるね』
嬉しいような寂しいような、どちらともつかない感情が、ぼんやりとした思考の上をふわりと吹き抜けていく。
その後を埋め尽くすように克己の幸せを祈る気持ちが、サバンナに満ちる朝日のような力強さで湧いて来た。
切なさにも似た胸の痛みはすでに遠く淡く、思っていたほど自分を傷つけることはなかった。
手の中のスマートフォンに再び視線を落とした。
克己以外からのメッセージが1件。
『身体は平気か? ……悪いが今日は様子を見に行けねェ。いろいろと疲れた』
一見、何でもないような文章。
なのに、ひどく胸を突かれた。
案じる言葉に、ではない。
普段ひょうひょうとした男が倒れこむ直前に疲れ切って吐いた一言が他ではない自分に向けて放たれたことに、心が震えた。
ただ会いたいと言われるよりも遥かに強く深い、執着にも似た想いが、その言葉の向こうに透けて見える気がして。
膝の上で力尽きて眠る龍之介を一晩中、外敵から守る自分の姿が明確にイメージできてしまった瞬間、猛烈な恐怖感が襲ってきて、スマートフォンを握る指先が震えた。
たった一晩で、自分の中の何かが確実に変わってしまった気がした。
抱かれたから?
そこから快感を得たから?
あの声に堕とされたから……?
簡単に落ちそうもないところがいいと、龍之介は言った。
この揺れが堕ちた内に入るのなら、あの男は自分に飽きて、関心を失うのだろうか?
「ふざけるな……っ」
自分だけがさんざん嬲られ、揺さぶられて終わるなど、我慢ならなかった。
簡単に忘れさせてなどやるものか。
揺さぶられても、堕とされても。
刃を向け続けていれば消えない傷の一つや二つは残せるだろう。
傷跡を見るたびに自分を思い出せばいい。
龍之介のメッセージに返信を返す。
堕とすか、堕とされるか。
これはもはや戦いだと、冷たい刃のような文面を打ち込み、送信した。
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