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裏切り(ハルトside)
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「……っ」
3面に置いたPCスクリーンの一つに侵入者を示すアラームが点滅していた。
即座に侵入者の居場所を特定し、役員棟の至るところに設置された監視カメラを対象に向ける。
「あ……」
役員棟の周囲をうろつき、侵入経路を探っている士郎の姿に、思わず目を見開いた。
生徒会役員に近づきたがる一般生徒が役員棟に侵入を試みること自体はそう珍しいことではなかったが、侵入しようとしてできるほどここのセキュリティーは甘くない。
放っておけば諦めるだろうとも思ったが、ふとほの暗い想いが胸に飛来した。
龍之介に想いを寄せられている士郎が、心底羨ましくてしかたがなかった。
克己の大事な幼馴染ならできれば仲良くしたかったが、龍之介に近づくとなれば話は別だった。
ひどい吃りでまともにコミュニケーションの取れない自分に、いつだってやさしく接してくれた克己。
実は自分もショックで声が出なくなったことがあるのだと、こっそり教えてくれた。
傍で見守る士郎の慈愛に満ちた静かな瞳が蘇る。
一見無表情でとても怖そうなのに、話すと少しも怖くなくて、言いたいことを言えずにすぐに黙り込んでしまう自分の言葉を、飽きずにずっと待っていてくれた。
この人がいたから、克己は今日までの日々を生きてこられたのだと思ったら、自分にとっての龍之介みたいだと親しみが湧いた。
できればこんなライバルのような関係にはなりたくなかった。
自分はきっと、ひどく意地が悪い。
わかっていても、誰にも譲りたくない人がいる。
スクリーンに反射する己の瞳が、強い光を放つ。
キーボードを操作して、士郎の前にあるドアのロックを解除した。
士郎はけして他言しないだろう。
なら、知ればいいと思った。
龍之介の真の姿を。
血に塗れた生き様を知ってもなお、好きだと言えるのか。
共に堕ちる覚悟がないのなら、近づくなと言いたかった。
怯えて逃げ出してくれることを願いながら、傷つくだろう龍之介を思い、罪悪感の中で祈るように目を閉じた。
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