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すべてを引き換えにしても(龍之介side)
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「……!?」
右腕を壁に突いた士郎の左手が、後頭部に回った。
「…ん…っ…ふ…」
思うままに口内を蹂躙された。
犯された。
魂の奥深くまで。
やがて唇が離れてからも、魅入られたように呆然と立ち尽していた。
背中に壁がなかったら、床に座り込んでいたかもしれない。
「……目の光が弱い。いつもの獰猛なおまえはどこにいった?」
濡れた唇を己の手の甲で拭った士郎が、あまりガッカリさせるなと吐き捨てた。
「進む道が違うのがなんだ? いったい何を怖がってる……?」
図星をさされて、カッとした。
再び胸ぐらをつかんで、床に引きずり倒す。
「……あンま調子に乗んなよ?」
士郎が笑った。
「おまえはそのくらい強気な方がいい……」
「……煽ンな、バカが。平気で半年一年、姿消すかもしンねェんだぞ? 下手したら二度と会えねェことだってある」
「寂しくて、泣くとでも?」
「ココロはともかく、カラダが疼いて泣くンじゃね? ……ってェ」
膝で思い切り股間を蹴り上げられて、生理的な涙が浮かんだ。
「……ったく、容赦ねェなァ」
「容赦はした。かなりな。本気でやったら、二度と使い物にならなくなってたはずだ」
「とか言って、マジで使いモンにならなくなったら泣くくせに」
「……泣くかもな」
「……は?」
「本当に死んだら、泣いてやる」
だから安心して戦ってこいと、背中を押された気がした。
「始終そばにいて、ベタベタ甘えかかるような関係は、互いに本意ではないだろう?」
疲れたら、眠りに帰る。
飢えたら、奪いに行く。
飽きたら、それこそいつでも切り捨てる。
「その程度の距離感が、オレ達にはたぶん、ちょうどいい」
自分の望みそのものの言葉に、頭の芯がジン……と熱く痺れた。
電流は足先から頭のてっぺんにまで流れ、やがては甘い尾を引いて消えていく。
猛烈に、目の前の男が愛しくてたまらなかった。
「……ダメだ」
「何が?」
「……我慢できねェ。今すぐ抱かせろ」
シャツに手をかけて、左右に引きちぎり、露わになった喉に噛みついた。
「……っ。おまえは本当に、飢えた獣みたいな男だな……」
てっきり突き飛ばされるかと思ったら、かすれた声でつぶやかれ、長めの黒髪に指先が埋まる。
少し乱暴に掻き乱し、耳の後ろを伝い降りていく感覚に、ゾクリと肌が泡立った。
「……腕に負担をかけるな。早く治したい事情があるんだろう?」
ふざけンなっ、と両腕を床に押さえつけた。
「腕が裂けたって、オマエを抱く……!」
今、自分のものにできないのなら。
何もかもすべてが意味を失う気がした。
ジンを優先すると決めたはずなのに、頭も身体も淡く霞みがかって、正常な判断が下せない。
間違っていてもよかった。
どうなったって、知ったことか。
今、初めて想いをつないだこの男を抱けるのなら。
すべてを引き換えにしたってかまわない……!
そんな想いが伝わったのか、やがて士郎が大きなため息の中で身体の力を抜いた。
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