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傷つけても止まれない(龍之介side)
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不意に目の前のシェルターが降り始めた。
驚いて足を止めた士郎の隣で、深くため息をつく。
犯人はわかっていた。
「……ハル、開けろ」
モニターとスピーカー越しに、今まさに自分たちを監視しているだろうハルトに向けて、声を放つ。
数秒待ったが、シャッターは止まる気配を見せず、完全に行く手を遮ってしまう。
緊急用の防火シャッターだ。
これを越えなければ、部屋には辿り着けない。
ハルトには、心底すまないと思う。
あれほど真摯で一途な想いを裏切り、自分は他の相手と甘い夜を過ごそうとしている。
許してくれなくていい。
恨んでくれてかまわなかった。
それでも引けない想いがある。
「……開けろ、ハル」
低く、繰り返した。
それでも開かないドアに、一度深く息を吸い、
「開けろ……!」
声を張り上げた。
数秒後、シャッターが上がり始める。
「……イイコだ」
モニター越しに、ハルトの射るような視線を感じた気がした。
泣き出す一歩手前の悲痛な声が耳について離れない。
すまないと胸の内で謝り、士郎の腕を引いた。
いつかきっと罰が当たる。
それでもいいと言い切ってしまえる自分に、呆れながら。
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