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なにもない部屋
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タクシーに乗り込んだ二人はそのまま真白のマンションに着替えを取りに一旦寄った。
佐伯は真白の部屋に来るのは初めてだ。玄関を通って短い廊下の先に部屋が一部屋。その部屋には物が殆どない。家具も備え付けだと言っていたデスクとシングルのベッドが一つ。しかしそのベッドの脇になぜか布団一式が鎮座していて滑稽に映った。
佐伯は小さな冷蔵庫を勝手に開ける。中には牛乳とビールだけ。
「……なんにもないね、この部屋」
「え? そうですか? 必要な物は揃ってますよ?」
「必要最低限って所だろうけど…この布団一式は?」
「……弟が勝手に…持ってきちゃって…」
「捨てろ」
「え?!」
「こんな物があるから、お前の馬鹿な弟はお前の家に泊まりにくるんだよ」
「……なるほど…確かにそうですね。粗大ごみに捨てちゃいます」
着替えを纏めながら、ふふふっと笑う真白に佐伯は内心溜息を付く。
泊まりに来られて迷惑していると言っているくせに、いつまでも弟の為に布団一式を部屋に置いておく真白は賢いのか馬鹿なのか佐伯は分からなくなる。仕事は同期の者達より抜きんでて出来ているのに、私生活の真白はどうにも脇が甘い。真白の話からすると佐伯にとって真白の弟は弟の範疇を逸脱している。
真尋は、兄に対しての執着が強い。真白の付き合ったという二人の女性は恐らく、真尋が原因で別れたのだろう。真白に彼女を紹介しろと迫り、紹介したらしたでデートのスケジュールや内容をしつこく聞いてきたそうだ。二人の内の一人は真尋が直接会いに学校の門で待ち伏せしていたと、後から聞いてそれにはさすがに温和な真白も真尋を窘めたそうだが、反省してるのか怪しい所だと真白自身が感じていた。
「支度出来ました」
「じゃあ、行こうか」
ニコニコとご機嫌な真白は先程なぜ佐伯が怒ったのか忘れていた。これから佐伯の家に行って佐伯と過ごせる事が楽しみで忘れてしまっている。そんな真白が可愛くて仕方ないが、佐伯は真白に釘をしっかり打っておかないと自分の身が持たないと、また内心で溜息を付いた。
佐伯の家に着いて、二人で大きなソファーに座りテレビを観て過ごす。特に観たい番組があるわけではないが、二人で一緒にたわいもない時間を過ごすのが良かった。佐伯は真白の腰に腕を回し抱き寄せ、時より思い出したように真白のこめかみにキスを落とす。初めはその行為に恥ずかしくて仕方なかった真白は小さく身を捩って逃げていたが、今は逃げても無駄だと悟り、佐伯のしたいようにさせている。真白もそういう風にしてくる佐伯に嫌な気分はしないし、受け入れるとそういう甘い時間が更に甘くなっていくと知った。しばらくそうしてから佐伯は真白に風呂へ入るように促し、真白は素直に従った。佐伯の家に来るようになってこうした習慣がついた。風呂で体を洗い浴室を出ると佐伯に声をかけて風呂へ促す。佐伯が風呂に入っている間に真白は寝室へ向かい、佐伯が来るのを待っていた。
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