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真尋の苛立ち
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日曜日、昨日の疲れを引きずった真白は、やはりお昼頃に起床しガックリと肩を落とした。せっかくの休みで佐伯の家に来ているのに、陽が高いうちは両日ともに寝過ぎてしまった。本当はもうちょっとちゃんとした生活がしたいのだが、佐伯のセックスはいつも真白の体力を削り疲れ果ててしまう。でも今日は昨日よりは体が楽に感じたので、もう少しスムーズに動けるだろう。
佐伯は当然のようにベッドにはおらず、真白は大きく溜息を吐き、佐伯の姿を求めてリビングへと向かった。
「やあ、おはよう、真白」
「……おはようございます」
佐伯は昨日と同じように大きなソファに座り、真白と同じようなブレスレット型の端末でニュースをチェックしながら優雅にコーヒーを飲んでいた。なんとなく真白はバツが悪い気持ちで挨拶をし、やはり昨日と同じように喉の渇きを潤すためキッチンにあるウォーターサーバーへ向かった。水を飲み干した後、昨日買った牛乳をコップに入れ、佐伯の座っているソファへと向かった。微笑みながら佐伯は真白を自分の横に座らせ抱き寄せ、こめかみにキスを落とす。真白もそれを気持ちよさそうに受け入れた。
「真白、牛乳好きだね…」
「…いや、そんなに好きじゃないです」
「え? でもよく飲んでるよね?」
「…まあ、そうですね…」
佐伯からそろ~っと目を逸らし、なんとなく言い淀んみ歯切れの悪い真白に佐伯が微笑むというより、なにか思いついたようにクスクスと笑う。チラリと横目でそれを見て真白の目じりが下がり、眉に皺を寄せた。
「……なんで笑うんですか」
「うん? 真白が健気で可愛くって、ついね」
「別に…健気じゃないですよ…」
真白はいつも健気にがんばって自分の身長を伸ばそうと、努力しているのが見て取れた。兄弟妹の長男だが、さっくりと弟に抜かれ、そろそろ妹に並ばれそうだった。どうにかそれだけは避けたい真白は頑張っていた。そんなに好きでもない牛乳を飲んで。これが健気と言わずに何と言えばいいのかと、佐伯はそんな真白が更に可愛くって仕方なくなる。真白病だ、それもかなり重症だ。そんな佐伯を真白がジト目で見る。
「……馬鹿にしてますね?」
「まさか。馬鹿になんかするわけない。真白は努力家で健気で可愛くてエロいって思ってる」
「…!最後の一言は余計です!」
顔を赤らめ佐伯を睨みつける真白は、その表情が佐伯を煽るのを知らないのだろう。佐伯はそんな真白が可愛くて押し倒したくなった。でも、やっぱり昨日と同じ、そろそろ真白にご飯をあげなければいけないだろう。
「何か食べに行こう、真白」
「…そうですね、お腹空きました。昨日のお店…今日はやってますかね?」
「昨日と同じ店? やってるけれど、同じでいいのか?」
「はい。昨日食べた日替わり定食、美味しかったです。今日も日替わり定食頼みたいですね…」
「じゃあ、支度して行こうか?」
話をしながらソファから立ち上がろうとした時、真白のブレスレット型端末に電話が入った。視界の端に疑似画面が表示され着信相手が移る。それを見ると真白は眉を寄せ顔をしかめた。その表情から察するに、真尋からの着信だと佐伯は気付いた。真白は小さく溜息をつき電話に出ようとしたが、佐伯が真白のその手を止めた。
「佐伯さん?」
「出なくていいよ、弟だろ? また大したことじゃないさ。ほら、食事に行くよ」
真白は少し逡巡し、それからそっと電話の電源を落とした。これで真尋には電話に出られないというアナウンスが流れていることだろう。確かに、週に何回かかかってくる真尋の電話の内容は大したことではなかった。世間話であったり、愚痴であったり。そして最後は必ず真白に家に行ってもいいかと聞いてくる。用がなければ来るなとその度に言うが、真尋は電話の度に同じように問うので、我慢強い真白もそろそろ疲れてきていた。真尋がどういう用件で電話をかけてきたのか全く気にならない訳ではなかったが、佐伯との時間を優先する気持ちの方が強い。本当に何か重大な事があるなら、真帆からも連絡が来るだろうと思い、真白は出掛ける支度をする為に、着替えの置いてある寝室へと足を向けた。
『ただいま、電話に出ることが出来ません。御用の方はメッセージを…』
「……なんで」
機械的に話す女性の応答メッセージを聞き真尋は電話を切った。
ここ最近、真白に電話をして話をしても、なんだか妙に冷たい。ちょっと前まではちゃんともっと話を聞いてくれていたのに。真尋は眉間に深く皺を寄せた。今日は大学の友人たちと飲み会をするので、久しぶりに真白の家に泊まりに行こうと思った。もう真白には1カ月半程会っていない。会いたいと電話で言っても真白は忙しいから無理だと言い、泊まりに行くと言えば、用もないのにホテル代わりに泊まりに来るなと冷たく言う。今までだったら真白は困ったような態度はとるが、最後は必ず真尋の願いを受け入れてくれていたのに。一体何が真白を変えてしまったのか、真尋には全く分からなく苛立ちだけが募って行った。
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