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真白の恩返し
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「真白? もしかて寝てた?」
『…いいえ、寝てました…』
「? 寝てたんだね?」
電話の向こうの真白の声は少し掠れていて、返答もなんだかおかしかった。佐伯は長い会議がやっと終わり、家路へと向かう自動運転中の車内で、真白になにか食べたいものがあるかと電話したのだった。
「なにか食べたいものとか、欲しい物はあるか?」
『…いいえ、なにも。それよりも早く帰って来てください、佐伯さん…』
早く帰って来て欲しいと、普段あまり言葉では甘えてこない真白が珍しく甘えている。佐伯は冷蔵庫の中に何かあったかと考え、最悪デリバリーでもいいかと家路へ急いだ。家に着くと、真白が玄関まで迎えに来て、真白から佐伯に抱きついてきた。いつもは真白が佐伯に抱きしめられて、照れて身を少し捩るがそれを許さない佐伯にキスをされる。そして最後は真白はなんだかんだで佐伯のやることを受け入れる。
「今日はどうした? ずいぶん積極的だね」
「…佐伯さん、会いたかったんです」
「そう、俺も会いたかったよ、真白」
素直に会いたいと言う真白に佐伯は極上の笑みをこぼした。そして二人は見つめ合い、どちらかとなく唇を重ねた。真白は佐伯の首に自分の両腕を絡め、佐伯は真白の体を抱き寄せる。おかえりなさいのキスとしては熱烈なキスだった。唇を離すと、真白の顔は赤く染まり、瞳が潤んでいる。でもどこか儚い。
「このまま、お前を押し倒したい所だけど…なにか食べないとね、真白」
「…俺は…押し倒されても…いいんですけど…」
「…あんまり煽るなよ、真白」
「? 煽ってません…よ?」
小首を傾げてそんな顔で煽ってませんとは、よく言う。佐伯は内心で苦笑いをした。そして、押し倒されても良いかな…と思った真白は佐伯の顔を見て、思い直す。
会社を出てから、電車に乗ってなんとか佐伯の家に辿り着いた。佐伯の為に何かしてあげたくて一度会社支給の制服を脱いで私服に着替え、スーパーへ買い物へ行ってきた。佐伯に自分の作った夕食を食べさせたかった。迷惑をたくさんかけてしまった佐伯へのせめてものお返しだった。
だいたい支度が済んだ後、ソファで横になっていたらいつの間にか、眠ってしまっていて、眠気眼で佐伯の電話に出てしまい、もしかしたら、また佐伯を心配させてしまったかもと佐伯にチラチラと視線を投げた。佐伯はテーブルの上に料理を並べていく真白を困ったような笑顔で眺めていた。
「…休んでろって、言ったのに」
「え? でも別にどこが悪いとかじゃないですから。大丈夫ですよ。佐伯さん、ビール、飲みますか?」
「いや、今日はいいよ」
「分かりました。お茶持ってきますね」
そういうと真白はまたキッチンへと小走りに向かっていった。冷蔵庫に冷やしたお茶を取り出しコップに注ぐ。今日は残暑が厳しい日だったので、あっさりしたものが良いと思い、一口サイズにちぎったレタスの上に茹でた鶏を乗せお手製のねぎだれをかけた。副菜にはもやしとニラと卵の卵炒め、スープはしめじとえのきの味噌汁を用意した。
「美味そうだ。でも作るの大変だっただろ? 無理しないで寝てれば良かったのに…真白は少しもじっとしてないね」
「そんなに大変じゃないですよ? 鶏肉は茹でるだけだし、もやしとニラは炒めるだけですし…支度の後、ちょっと寝ちゃいましたし…」
そう言ってにっこりと笑う真白は佐伯の家にいるせいか、会社での堅さはすっかり抜けて、ふわりと柔らかく笑う。そんな真白の頬を優しく撫で、佐伯は真白が作ってくれた料理を堪能しようと席に着いた。真白もそれに続いて席に着く。二人で手を合わせていただきますと言い、食事を開始した。
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