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お腹痛い
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「……真白、胃が痛い?」
「え?」
「無意識? さっきから胃を摩ってるよね?」
「摩ってましたか? …でも大丈夫ですよ」
真白はそう言いながら、食事の後片づけをしようとテーブルの上にある皿に手を伸ばした。しかし、その手を佐伯がそっと掴んで、にっこりと真白に微笑みかけた。
「真白、片付けは俺がやるよ。お前はもう風呂に入って、寝なさい。」
「え…でも…」
「真白が今日は俺の為に食事を作ってくれたんだから、俺がお返しに後片付け。ね?」
「……でも、食事は…」
今日、佐伯に真尋のことで迷惑をかけたから、それのお詫びのつもりで作ったのに…結局佐伯に心配かけさせてしまった。真白は落ち込んだ気分がまた落ち込む。どんどん落ち込んで、自分ではどうしようもない罪悪感を感じた。それを感じ取った佐伯が真白に優しく囁いた。
「真白、お前はね、考え過ぎ。お前は誰のもの?」
「…佐伯さんのもの」
「そうだよ。俺のものなんだから、迷惑かけたとか心配かけたとか、そんな事考えなくて良い」
「…でも」
「お前のかける迷惑なんて、なんでもないね。子猫がちょっと引っ掻いたぐらいだ。そのぐらいで俺が揺らぐ訳ないだろ? さあ、風呂に入っておいで」
「……ごめんなさい」
「違うだろ? 真白」
佐伯は真白の額をちょんと指で突いた。真白は少しだけ笑い、ありがとうございます、と言い直し、風呂へ入るために寝室へ着替えを取りにいった。佐伯は皿をキッチンへ運び、自動洗浄機へ放り込む。スイッチを入れれば、あとは勝手に機械がやってくれる。真白が申し訳なく思うほどの作業ではない。相変わらず真白は人に頼るのが苦手だ。他人に我儘を言ったり、甘えたりする事がいけないことだと思っている。真尋のように度が過ぎると問題だが、ある程度は人に頼るのは間違いではない。仕事でも私生活でも人に頼っていくことで、上手くいく方が多い。しかし小さな甘えでも真白にとっては、罪悪感を抱く事になるらしい。佐伯はもっと真白が自分に甘えて寄りかかってくれれば安心なのだ。佐伯がいないと生きていけないぐらいになって欲しいと思っている。そうこうしているうちに、真白が風呂から上がっていた。青白い顔は先程に比べ、風呂で温まったせいかほんのり赤くなって血行が良くなっている。
「佐伯さん、お風呂、上がりました」
「そう。じゃあこれ飲んで、もう寝ちゃいな」
そういうと、佐伯は長方形の薬袋と白湯を真白に手渡した。真白はそれを素直に飲むと、また申し訳なさそうな顔で佐伯に向きあい、抱きついた。佐伯も抱きついてきた真白を更に抱き寄せ、二人は唇を重ねた。
「…ありがとうございます。それじゃ、おやすみなさい、佐伯さん」
「うん。お休み、可愛い真白」
可愛いと、言われ真白は顔を赤くした。どうにも可愛いと佐伯が言ってくれるのに慣れない。自分が可愛いとは思えないし、何度言われても照れてしまう。そんな真白を佐伯が寝室へ行くように促した。真白も大人しく寝室へ向う。そしてそのままベッドにもぐりこむ。まだ少しだけ痛む胃を抑えたが、横になるとすぐに瞼が重くなってきた。今日は暑かったし、精神的にも真白はかなり疲労していた。明日は仕事があって朝早くから現地調査へ行く予定だ。しっかり休んで明日に備えなければいけない。考える事は山ほどあったが、真白はもう意識を手放した。考えても仕方ない事は考えない、そう自分に言い聞かせながら。
しばらくして、佐伯が真白の横に滑り込んできたのを感じた。真白の腰に手をやり、胸に抱き寄せる。真白は無意識に佐伯の体に自分の体を擦り寄せ、安心して短い溜息を付き、また深い眠りについた。
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