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七夕企画②
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『プルルルルルルル』
「わわ!」
電話の着信だ。しかも今、かけようかどうしようか迷っていた相手だった。真白の心臓が早鐘のように鳴り、手が震えた。それでも急いで応答を押し電話に出る。
「も、もしもし…佐伯さん?」
『…真白、いい子にしてる?』
「…そのつもりですけど」
『それにしては、なんだか声が色っぽね…何してたの?』
「は? ベッドでゴロゴロしてただけですけど…」
『そう? ベッドで一人遊びでもしてるのかと思った』
「し、してません!」
真白は顔を真っ赤にして全否定した。佐伯の事を考えていただけだ。色っぽいもへったくれもない。それにこんな変な会話をしたくて佐伯に電話をしようかどうしようか悩んでいた訳ではない。真白は咳払いを一つし話題を変えた。
「…佐伯さん、今日はこっちは雨なんですけど…そちらはどうですか?」
『ああ、すごく晴れてて天の川が良く見えたよ。田舎だしね、空気が澄んでる』
「じゃあ、そちらでは織姫と彦星は会えるんですね…」
『…真白…もしかして、寂しい?』
真白はそう聞かれると、一瞬フリーズした。自分の会話のどこに自分が寂しいという所が出てしまったのだろうか…佐伯はいつも真白の心を見抜いて、真白は嘘が吐けない。嘘を吐く気はないのだが、我儘に寂しいと言って佐伯を困らせるのがイヤだった。佐伯の負担になりたくない。でも今日はその我慢がどうにも出来そうにない。朝から家族の楽しかった思い出を夢で見たからだろうか?真白は弱い自分への自己嫌悪でベッドに突っ伏した。フワリと佐伯の香りがする…香りが胸に充満すると寂しさがどんどん溢れて止められない。胸が痛い。それでも精一杯強がってみた。
「…そんなことはないです。でも…早く帰って来て欲しいような気はしてます」
『素直じゃないね、真白。変な言い方』
電話の向こうでクスクスと佐伯が笑う。真白は、ふと、耳で音をよく拾うと佐伯は移動しているようだった。
「? 佐伯さん、散歩にでも出てるんですか?」
『うん? 分かる?』
「外ですよね?」
「いや、もう家の中にいるよ、真白」
電話の声、ではなかった。耳に届くその声は、なにも遮ることなく真白の耳に届いた。直接鼓膜に響いた声に体が震えた。起き上がろうと腕に力を入れて顔を上げる。佐伯が真白の腕を取り、引っ張り上げ胸の中に抱きしめた。真白は驚いて体が硬直している。なんで?という疑問符が頭の中で溢れてくる。
「ただいま、真白。寂しかった?」
佐伯の声が今度は耳元で聞こえた瞬間、真白は体の力がふっと抜け、ゆっくりと佐伯の背中に腕を回し抱きしめる。抱きしめる腕に力を込める。本物の佐伯だ。夢ではなかった。ゆっくりと佐伯の顔を仰ぎみるといつもの微笑みが真白を見つめる。真白は安堵し瞼を閉じるとどちらともなく、唇を重ねる。互いの唇を啄ばみ、深くキスをする。角度を変える為に唇を離す合間に、真白は愛しい人の名を呼ぶ。
「…んっ…さえき…さ…」
佐伯は真白の口内に舌を差しこむと、真白の舌が待っていたように絡みつく。佐伯が少し引いて唇を離し舌だけを絡ませ合うと、真白が追いかけ佐伯の唇を食む。しばらくお互いの感触を味わうと唇をはなし、真白はまっすぐ佐伯を見る。目元はほんのり赤く染まり、その瞳は佐伯がいなくて寂しかったと訴えている。
「おかえりなさい…佐伯さん…寂しかった…寂しくて…会いたかったです」
「俺も、会いたかったよ、可愛い真白」
そう言うと二人はまた唇を重ね、ベッドに沈んでいった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
これで、七夕企画を終わります。次から本編ですが…風邪がまだ良くならずでして、更新のペースが落ちそうです(>人<;)読んで頂いてる皆様、すみません。
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