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ごはんを食べよう
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真白は次の日、検査を終えて退院してもよいと医師から言われた。医師からはちゃんと食事をしないとダメだよと言われ、首を竦めた。退院の準備で真尋も真帆も学校を休んで付き合うという申し出を、真白は断った。俺の為を思うなら、しっかり勉強してほしいというと、二人は真面目に学校へ通う事を約束してくれた。二人とも、真白が倒れて、改めて兄のいるありがたさを感じたのか素直だった。
「二日間の入院だったから、そんなに物がなかったね」
「佐伯さん、すみません…会社、これからでも行ってください…」
「大丈夫。出張でずっと休みもなかったから、代休扱い。つまらない仕事ばかりさせてくれたしね」
「つまらない?」
「真白がいないから、つまらないよ」
「…え?」
「ああ、木彫りの熊、売ってなかったんだよね…なにか埋め合わせするからね」
「…いや、そもそも木彫りの熊は欲しくなかったので埋め合わせなくていいですよ」
佐伯は真白が退院するので迎えに来た。それどころか、看護師から栄養指導書と薬を貰って支払いも全て済ませた。真白が治療費は自分で払うと言ったのだが、佐伯は自分の父親が悪いから、そのうち父親に請求するからいいよ、と、どこか人の悪い笑顔で言った。真白は、大きく溜息を吐き、いつかちゃんと佐伯の父親にも認めてもらえるように、努力しようと再度思った。二人はそのまま佐伯の車で行きつけの小料理屋へ行って食事をすることにした。昼時を少し過ぎて、店はもう客がいない。真白は日替わりを頼みたかったが、どうやら売り切れのようだった。
「ごめんね、真白くん」
「いいえ、大丈夫です。じゃあ…このキンメダイの煮付け定食にトロロごはんお願いします」
「はいよ! で、佐伯さんは? どれになさいます?」
「俺は、トロアジの開き定食と、同じくトロロごはんで」
「かしこまりました! おとうさーん、キンメ、トロアジ、二つともトロロ!」
「んなデカイ声じゃなくても、聞える…」
「あっらー! 確かにそうね! あはははは!」
この店は明るくて優しくて元気な女将と、少し無愛想だけど料理がピカイチな店主、忙しい時間帯にはバイトの学生が給仕をしている。時間的にもうバイトはおらず、女将と店主、佐伯と真白だけになった。
「真白くん、また少し痩せた? ダメよ? ちゃんと食べないと!」
「…そうですよね、ちゃんと食べます。ちょっと夏バテを引き摺ってたので」
「佐伯さんも、ちゃんと真白くんにご飯食べさせないと!」
「…反省しています」
「え? えええ? なんでです? 佐伯さんのせいではないですよ?」
真白は顔が熱くなった。この気の良い女将は一体何を知っているのか…?女の感みたいなもの?真帆もそう言えば何か真白達に気を回している風だった。この店の料理が真白は気に入って、佐伯がいない日にも時々、一人でも夕食と晩酌を兼ねて来ていたのだった。そしてちゃんと真白と佐伯のボトルが入っている。
しかし今日は出された定食を、真白は半分しか食べられなかった。まだ胃の調子が万全ではない。申し訳なくて女将たちに謝った。二人は気にしなくて良いと優しく行ってくれ、お土産にお握りを持たせてくれた。佐伯と二人で、佐伯の家に帰ると真白は二日ぶりのシャワーを浴びてスッキリした。それと同時に眠気が襲う。たくさん病院で寝てたのに…と思ったが、気が付くとユラユラ体が揺れている。
「真白? 眠いの?」
「いいえ、大丈夫です…」
「我慢する事じゃないでしょ。ほら、一緒に寝室へ行こう。」
佐伯に促される。一緒にいてくれるなら、ベッドに行ってもいいか…そう思えた。一人で広いベッドに居ると寂しい。そして、自分の家で狭いシングルのベッドの上でも一人でいたらやっぱり寂しかった。佐伯が一緒にいてくれるなら、どこでも寂しい思いはしない。まだ寝るには早い時間だったが、佐伯も出張の疲れがあるし、真白はそろそろ起きているのが限界だった。同じベッドで一緒に二人で抱き合って、互いの体温を感じる。それだけで安心出来た。
「おやすみ、可愛い真白…」
「おやすみなさい、佐伯さん…」
真白はそう言い終わるか終わらないか意識が薄れていく中、佐伯の優しい愛情に満ちた瞳が見え、安堵した真白は眠りに落ちた。佐伯は自分の腕の中で安堵した表情を浮かべ眠る真白の額にそっとキスを落とし、瞼を閉じた。
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