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諦め
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真白は帰りにスーパーで惣菜を買って帰ってきた。佐伯と食べようと思って、少ない量で色々な種類を購入した。
「佐伯さん、何か飲みますか?」
「そうだね、昨日の飲みかけのワインを出してもらえる?」
「はい」
真白は佐伯の赤ワインと、自分の為の焼酎と氷をセットして、ダイニングテーブルに置いた。買ってきた惣菜を温めて皿に移す。佐伯がそれをダイニングテーブルへ運んでくれた。そして、二人で席に着き、惣菜をつまみに少し遅い夕食を摂る。
「そういえば、佐伯さん…」
「うん?」
真白は、鮫島にヘッドハンティングされた事を話そうか、少し悩んだがやはり報告した方がいいと佐伯に話した。
「冗談だとは思うんですけどね」
「冗談じゃないって言ったんだろ?」
「…そうですけど」
「で、どうするの?」
「断りますけど…」
「けど?」
真白はなんだかモヤっとした気持ちが広がった。どうするの?と佐伯が聞いてくるとは思ってなかった。そんな風に聞かれなくても、真白は考える余地もなく断ってきたのだ。そしてこれからも申し出を受ける気はない。なのに、佐伯はそうやって聞いてくる。それがイヤだった。すると佐伯がクスクスと笑い始めた。真白はこの時初めて、佐伯にからかわれていたのだと分かった。
「…佐伯さん、意地悪です」
「ごめんね、真白」
「悪いって思ってないですよね?」
「そんな事はないよ?」
「…ちゃんと断りましたし、これからも受ける気、ないですから!」
「当然でしょ? 真白は俺のものなんだから」
「…じゃあ、こういうことで、からかわないで…欲しいです」
真白が肩を落として、下を向く。こういうことでからかわれると、不安になる。佐伯は真白を手放すのだろうか?それが今でなくともいつか…
「真白」
佐伯の声色が変わった。ハッとして真白は顔を上げ、佐伯を見た。佐伯は笑っていない。真剣な顔つきだった。でも瞳は真白を幾つしむ眼差しを向けている。
「真白、本当にごめんね。真白をこれからもずっと手放すことはないよ。そんなこと出来ない」
「……佐伯さん…」
「もう絶対に離せそうにないから、真白。諦めて」
「……はい。俺も絶対佐伯さんから離れないです。だから佐伯さんも諦めてください」
二人は互いを理解し尊重し、愛しあっている。これは未来永劫変わらない。微笑みながら、暖かい気持ちでまた二人は食事を始めた。
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