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監視の目
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聴取は会社の応接室で行われた。
傷害事件として扱われる為、被害者の真白は新舞浜フロンティアで男にされた事を話した。会社に刑事二人と鮫島が来た。真白の怪我のカルテは既に佐伯が纏めてファイリングしてあった物を警察に提出してある。真白はそういった事に知識がなかったため、自分の事なのに佐伯にまた全てさせてしまい、自分の無知さに恐縮しきりだ。二人の刑事の初老の男がそんな真白を見て穏やかに笑う。
「こういうことに慣れている人の方が珍しいんですから、そう恐縮しないでね? 水上くん」
「はい、ありがとうございます…あのそれで、あの人は…今…」
「ああ、あの男はね、まだ錯乱状態で…医療の整った拘置所に搬送したよ。どのみちあの状態じゃ暫くは出てこられないだろうから、心配しなくていいよ」
暫くは出てこられない…ということは、暫くしたら出てくるんだろうか…真白は心が冷えていく気がした。あんなのともう会いたくない。あの目が怖い。狂ったあの目が…
「水上」
佐伯が真白を呼んだ。真白はハッとして、佐伯を見ると、いつものあの優しい包み込むような暖かな瞳で、真白に大丈夫だよと、語りかけていた。真白の冷えた心に暖かい光が差してきたようなそんな気がした。落ち着きを取り戻した真白に鮫島が声をかける。
「…すみません、水上くん」
「はい?」
「本当にあの男に見覚えはないんですよね?」
「ありません…」
「あの男の言葉にも…」
「何も…知りません…私が教えて欲しいぐらいです…」
「ああ、それと…旧区役所で、光ったモノの事、何か他に思い出したりしてませんか?」
「え? いえ…特にはなにも…」
「そうですか…分かりました。貴重なお時間、どうもありがとうございます。少し君の上司と話がしたいので、水上くんはどうぞご退席ください」
「あ、はい。…あのそれでは、失礼致します…」
「お疲れさまでした」
真白は席を立ちながら無意識に佐伯に目をやる。佐伯はまた、大丈夫だよ、と瞳で語りかけてくれ、それを見て真白は部屋を後にした。安心したような表情で部屋を出ていった真白を見届けた佐伯が、鮫島と、刑事だと名乗った二人に視線を戻す。
「で、水上の疑いは晴れましたか?」
「佐伯さん、水上くんは被害者ですから、疑うもなにも…」
「ふん! それにしては…被害者を見る目って感じじゃあありませんなぁ…」
話に割り込んだ前島が鼻を鳴らして、三人の顔を訝しげに眺める。三人は苦笑いをしながら、お互いに何か目で合図を送っていた。佐伯はその様子を見て、内心で舌打ちをする。おそらく真白から目を離す気が鮫島にはなさそうだ。この男は表向き真白には良い顔をしてはいるが、真白に疑いを持っている。だったら、暫く泳がせて、真白が清廉潔白であることを確認させるのも悪くないだろう。
「…まあ、ご自分達の目で確かめなければ納得なさらないんでしょうね」
「そうですね、我々の仕事はそういう仕事ですから」
「は~。…あんたら二人とも、刑事じゃないんでしょ?」
「それは御想像にお任せします」
「…水上を襲った男の正体ぐらい教えてくれてもいいんじゃないですか?」
「こちらも調べていますが…何分男が錯乱状態で。身分を証明できる物もありませんでしたので」
初老の男と、それより少しだけ若く見える男が微笑んだ。前島は心中で食えない奴ら…と悪態をつく。身分を証明できる物がなければ、新舞浜フロンティア市に入る事は基本的にできない。海を自力で渡るか、空から降ってくるかでもしないかぎりは。そしてこの二人大方、マモン対策の人間か、公安ってとこかね…と二人を見る。
佐伯は二人が誰であろうとどうでもいい。用は真白に何もなければいいのだ。もし真白に不利益になる事をこの三人が目論むなら、徹底的に全力で潰す、ただそれだけだ。佐伯はいつものように微笑みを浮かべ三人を眺めた。前島はそんな佐伯を見て、心中で「こえ〜よ」とボヤいた。
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