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真姫菜、突します
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「水上さーん! 4番にお電話なんですけど…なんか代われば分かるからって、名乗ってくれなくて…」
「? はい?」
「どうします? 上手く言ってお断りしましょうか?」
「…いえ、出ます。4番ですね」
真白は女性社員から電話を引き継ぐ。仕事上、真白には外部からの電話はあまり着た事がなかった。しかも出れば分かるという相手。一体何者なのか。真白は少し緊張しながらも指定された番号を押し電話に出た。
「お待たせ致しました。水上です」
『ホント、お待たせしてくれて…今ね、白くんの会社のロビーにいるから! 早く来てね!』
ガチャン!
「……え…?」
真白は急いで作業中だったPCをロックし、足早にエレベータへと向かった。隣席の山村のどうしたの?という問いも聞えず、エレベータのボタンを押す。ああ、なんでまたこんな事にと、真白は頭を抱えてしまった。
一階のエレベータホールへ着き、セキュリティーゲートの傍に行くと、ゲートの外側に明らかに目に付く背の高い、少し派手目の女性が立っている。大きな帽子に大きなサングラス。短めのスカートからは長くて細い足が伸びている。全身は赤と黒でコーディネートされて、周りを歩いている人々が彼女に視線を向けていた。真白はゲートを出てその女性に近寄っていった。
真白に気付いた女性はサングラスを取り、腰に手を当て頬を膨らませた。
「あ! 白くーん! おっそーい!」
「……お母さん…なんでいんの…」
「え? だって、彼氏出来たとか言うから、見に来た…」
「ちょっと! ダメだってば!!」
真白は慌てて母親の口を塞いだ。母親は真白よりも5センチ背が高い。しかもヒールの付いた靴を履いていて真尋とほぼ同じ背丈だ。母、真姫菜は少し屈んで真白に耳打ちをする。
「あ、なに? 秘密に付き合ってんの?」
「…そうじゃないけど、会社でこういう事あまり言って欲しくないの!」
「なによ、そういうの、男らしくないわね…」
「色々あるの! っていうか、なんで会社に来てるの?」
「ん? 白くんがどんな会社に就職したのか見たかったから」
「…なんで会社の外線から電話してきたの?」
「電話対応で、会社の質が分かるから」
「…あ、そう…」
真白は呆れてしまった。真白の勤めている会社はそれなりの大企業だ。知らない人はいないというぐらいの有名企業なのに、この母親は…自分の目で耳で確かめた物しか認めない所は変わらない。
「中、見たいんだけど?」
「……え?やだよ…小学校の授業参観じゃないんだから…それに俺、今就業中だからもう戻るよ…」
「なによ、わざわざ仕事放り投げてフランスから帰国したのに、その可愛くない態度は!」
「…仕事投げ出してまで、帰国しなくて良いよ」
「んま! 生意気~!」
そう言うと、真姫菜は真白の両頬を抓って引っ張る。真白はそれでも、真姫菜を帰らせようと腕を取って外へと向かおうとした。
「もう、ひゃえっへ!(もう、帰って!)」
「ホントに頑固ね。誰に似たのよ?」
「おあひゃんにひゃない? ひほとひゃやめひにりあへるはら、ひょっふぁへまへへひょ」
(お母さんにじゃない? 仕事は早めに切り上げるから、どっかで待っててよ)
「ちぇー。しょうがないわね~、彼氏連れてきなさいよ!」
「ひゃはら!ひゃへはっへ!」
(だから! ダメだって!)
「あ~はいはいはいはい。メール入れるからね」
真姫菜はそういうと、スタスタと外へと歩き出し、薄ろ姿でヒラヒラと真白に手を振って社を後にした。しかし、佐伯の事を知らせただけで、フランスから帰国してくるとは思わなかった。今まで出来た二人の彼女の時には帰国しなかった母親が、佐伯の場合だけ帰国したことに、真白は首を傾げる。まさか…反対なの?とまた少し不安になる。あの母ならばそうそういう事はないと思って反対された場合の事を考えていなかった。真白は真姫菜に抓られた頬をさすり、溜息を一つ吐いた。
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