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選ばれた
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「やったな! 水上!」
「やっぱ、お前スゲー奴だったんだなぁ」
「ありがとうございます」
部署のあるフロアが真白への賞賛でわいていた。朝、社員への一斉送信メールの内容は皆驚きと同時に、真白ならばあり得るだろうと皆納得していた。
「おめでとう、水上」
真白がその声に振り向くと、そこにはいつもの微笑みを浮かべた愛しい人が立っていた。真白は少し照れながらも佐伯に微笑む。
「ありがとうございます、本部長」
建設中のモジュールの建物の1つが国家主催のコンペで真白の線引きが選ばれた。建物というよりも、公園なのだが、計算されたその公園はマモン対策に新しい技術を取り入れた、洗練された公園になるだろう。
佐伯は嬉しそうに微笑む真白を見て、暖かい気持ちになる反面、あの真白に似た人型マモンの出現したモジュールに真白を関わらせる事を内心一抹の不安を抱いた。
「…もう少し早くに知ってたら、コンペに出さなかったけどな…」
「仕方ないさ。アレが出る前だったしね…」
前島が小声で佐伯に耳打ちした。コンペ参加後に人型マモンの存在を知ったのだから仕方ない。そして何より仕事を楽しそうにする真白に、社の線引き屋全員が参加していたコンペに出るなと言うのは酷だ。それでなくても、真白は新舞浜フロンティアの一件からずっと現地調査に出してもらえていない。だが真白は文句一つ言わずに黙々と自分に与えられた仕事をしていた。真白は真白で何か思う事があるはすなのだが、佐伯に不平を漏らす事はなかった。
「修正も入ってくるだろうし…一度、モジュールへ見学に行ってみるか? 水上」
「え?! 良いんですか?」
「実際に見ないと分からない事もあるからね。来週、俺もモジュールへ行くから、その時に一緒に来たら良い」
「はい! ありがとうございます」
佐伯に真白は本当に嬉しそうにお礼を言った。その笑顔は佐伯の心を揺さぶる。何もなければ佐伯も素直に真白と喜べたのにと、胸が痛む。心から喜んであげられなくて、とても哀しい。
他の社員から、祝いの言葉をもらっていた真白が、ふと、佐伯を見た。大きな瞳はただ佐伯だけを映す。佐伯はその瞳を見て、真白に優しく微笑む。大丈夫。そう語りかけるように。
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